「情報流通の分散化」ならず〜ノアドットの現在と今後①

2022年秋頃から現在にかけて、メディア業界では「ニュース記事の適正対価」についての議論が熱を帯びています。特に昨年9月、公正取引委員会が「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書」(概要)を発表したことが、大きな転機となりました。報告書では、ニュース配信サービスを運営するIT大手がメディアに対して支払う記事使用料につき、「算定根拠を開示することが望ましい」とされています。

これまで長く問題となってきた「流通を司るIT大手に対し、記事の対価を適切に主張できないメディア」という構図が、あらためて問題視されるようになったのです。

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当社は、2015年の創業時からこの問題への取り組みを続けています。

ノアドットの背景

当社が2015年12月から提供しているコンテンツ共有プラットフォーム「ノアドット」は、Yahoo!ニュース等のIT大手が情報流通を支配していることへの問題意識をきっかけに考案されたサービスです。

このサービスでは、850以上のメディア・1000万本以上の記事から、任意のものを選んでサイトやアプリに掲載(=キュレーション)することが可能です。

サービスの仕組み

この「キュレーション」によって、メディアは自ら取材して書いた記事だけでなく、他社(他者)が執筆した記事も含めてメディアを設計・運営できるようになり、より幅広い記事を読者に提供することが可能となります。実際に、新聞社や放送局、雑誌、ウェブ専業媒体、IT企業やその他の事業会社、個人に至るまで、幅広いプレーヤーが「キュレーター」としてノアドットに保管された外部の記事を自サイト・アプリに取り込んできました。

当社が狙ったのは、メディアがキュレーションによってコンテンツを拡充し、集客力を向上させることによって情報流通のパワーバランスが変化することです。IT大手による情報流通の独占的支配に風穴が空き、コンテンツの価格を決定する力がIT大手からメディアに適切に移動すれば、メディア産業の持続可能性は高まります。

現在までの到達点

ノアドットは、実際に多くのメディアの皆様から(ときに感動の声をもって)歓迎され、広く利用されてきました。しかし、その成果として当社が目指した「情報流通の分散化」については、まったく果たせていません。サービスを利用するキュレーターの中で、既存のIT大手の支配力の一部を奪うほどのメディアは現れていないのが現状です。

目的を果たせていない原因

目的を達成できていない原因の一つとして、ノアドットに保管される記事のボリュームが不足しているという点が挙げられます。特に、全国紙をはじめとする一部の大手メディアはノアドットに参加しておらず、キュレーターとして利用したいコンテンツが見つからないという指摘もあるかもしれません。

しかし、より根本的な原因は「キュレーションが発見されない」ことにあります。キュレーターがノアドットから選んだ記事の見出しをサイトやアプリのトップページに掲載しても、それが読者の目に触れる機会が極めて少ないのです。この状況が、当社が目的を果たせていない最大の理由となっています。

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