ローマ・カトリック教会 前田枢機卿が五島列島に 世界遺産を訪問 「迫害の歴史知って」 

ミサを執り行った前田枢機卿=五島市末広町、福江教会

 ローマ・カトリック教会の前田万葉枢機卿(74)が10月末、旅行会社の巡礼ツアーで五島列島に滞在した。前田氏は、潜伏キリシタンへの迫害の歴史から現代の差別や平和に関する問題の解決に向けた糸口を見いだすことを期待した。
 新上五島町出身の前田氏は、潜伏キリシタンの子孫で被爆2世。2018年、ローマ教皇に次ぐ高位聖職者、枢機卿の一人となった。
 前田氏は世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の登録5周年について「巡礼や観光で五島にも多くの人が訪れ、歴史を知ってもらうことができたのは良い機会」と指摘。「潜伏キリシタンへの迫害の歴史は、命や人権について真剣に考えるきっかけになる。差別は絶対にあってはならないという意識を持ち、平和を築いてほしい」と述べ、同遺産の認知度向上を願った。
 幕末維新期に五島市久賀島で42人が殉教した「牢屋(ろうや)の窄(さこ)事件」では、前田氏の曽祖父ら親族も迫害を受けた。前田氏は殉教者がカトリック教会で最高の崇敬対象「聖人」や、その前段階の「福者」に列せられることを希望し「機運を高めるため、むごい迫害があった歴史を知ってもらいたい」と語った。
 前田氏は10月28~31日、全国各地のカトリック信者ら約40人と世界遺産の構成資産、久賀島の旧五輪教会堂、新上五島町の頭ケ島天主堂などを巡った。28日は、五島市の福江教会で地元信者も参加してミサを執り行った。

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