現行サービスの終了と新サービス〜ノアドットの現在と今後④

ノアドットの現行サービスが直面している課題について、これまで以下の記事で明らかにしてきました。

ここからは、これらの課題を当社がどのように解決しようと考えているかを紹介します。

現行サービスの終了

いずれの課題も、現行サービスを微調整する程度では解決が難しいことから、根本的な解決に取り組むこととし、そのためにまず現行サービスのキュレーター向けの提供を終了来年2025年3月を目処に段階的に終了)します。

ただし、一定のトラフィックをもたらすキュレーターに対しては、当面現行サービスのご提供を継続します。対象となるキュレーターには既にご案内済みです。コンテンツホルダーが得られている現在の収益への影響は軽微と考えております。

また、コンテンツホルダーを対象とした、ノアドットへの記事の保管サービスならびに外部メディア(IT大手)への配信代行サービスは変わらず引き続き提供するので、ご安心ください。

新サービスの概要

キュレーター向けのサービス提供を終了して終わりということではもちろんなく、当社では新サービスの提供を検討しています。

2024年夏以降のリリースに向けて現在検討している内容の一部をこれから紹介しますが、先立って私たちはまず以下のように市場認識をアップデートし、それにもとづいてサービスの提供対象も変更します。

市場認識のアップデート

私たちのこれまでの市場認識は「良いコンテンツにはお金がかかる」というもので、「組織ジャーナリズムの持続可能性を高めるには適正な対価が不可欠である」という立場でした。

しかし今後は、この考えに加え「良いチャネルにもお金がかかる」という新たな認識を持ち、共有していきます。

「チャネル」とは、一般には販路、またメディアにおいては一般に「コンテンツが流れる道」のことです。では「良いチャネル」とは何かというと、「コンテンツを読者に直接届ける口を持っている、つまり読者をダイレクトエントリーさせているメディアのことです。

良いチャネルには、お金がかかる ーー それは、「トップページから記事を読みに来る読者を獲得するには、ユーザーファーストな研究開発やマーケティングなど一定の投資が必要だ」ということを意味します。自サイトへのアクセスの大半が、検索エンジンやYahoo!ニュースの「関連リンク」等からの記事ページへの偶発的なアクセス(サイドドアアクセス)であるメディアももちろん、価値あるコンテンツを読者に届けていることに変わりはありません。しかし、そうしたメディアがIT大手による流通独占に争う力となるのは難しいということです。

この認識にもとづいて、私たちは「チャネル」という概念を重視するものとし、新サービスでは「キュレーター」を「チャネルオーナー」と新たに呼称する予定です。(併せて「コンテンツホルダー」の呼称も「コンテンツオーナー」に変更します)

新サービスの提供対象:誰が「チャネルオーナー」になれるのか?

これまでの方針では、利用約款に同意し、それを遵守できるすべての法人や個人がキュレーターとして利用できました。しかし今後は、上記の市場認識にしたがって、チャネルに一定額の投資をする方針を持つメディアを対象とする予定です。たとえば、チャネルの認知を獲得したり継続利用してもらうためのマーケティング戦略に予算を設定できるような法人が想定されます。

ノアドット自身のチャネル化と集客

新サービスの提供に先立って、ノアドットも自らチャネル事業に投資します。

ノアドットはこれまで、自らをあくまでもプラットフォーム、黒子と位置づけ、読者を直接集めるキュレーションサイトは運営してきませんでした。しかし、キュレーターによる十分な流通拡大が行われないなか、コンテンツホルダーの皆様からは「ノアドット自身による集客でも、記事閲覧数と収益の拡大につなげてほしい」というご要望をたびたびいただいてきたことを受け、今後は新たなドメイン〈 news.jp 〉にてノアドット自身がチャネルを持ち、コンテンツオーナーの皆様の記事に読者を集めていきます。

news.jp (メディア名は未定)は、今年夏以降にリリース予定です。

ノアドット自身が news.jp ドメインで集客を開始した後、「チャネルオーナーになりたい」というメディアの皆様向けに新サービスを提供する予定です。

チャネルオーナー向けの新サービス(検討中)

検討中の新サービスにおける最大の特徴は、「チャネルオーナーがサイト内で記事全文を表示できる」ということです。ただし、チャネルオーナーは、現行サービスのように自ドメインで記事(見出し)を掲載するのではなく、 news.jp のサブドメインを用いたサイトを運営することで、読者に記事全文を提供できる形を想定しています。

以下は、イメージ図です。

ノアドットは、コンテンツオーナーがノアドットに保管した全記事群、そしてそれを配信するシステム、コメントや課金そして収益分配のシステム、ユーザーインタフェースを丸ごと、メディアパッケージとしてチャネルオーナーに提供します。

私たちはこれを、「 news.jp のホワイトレーベル化」と呼んでいます。チャネルオーナーになりたい方は、ノアドットへのサービス利用申請などの手続きと承認を経れば、開発コストをかけることなくすぐにサイトを運営開始できます。「コンテンツオーナーがノアドットに保管した全記事群をパッケージとして提供する」といっても、チャネルオーナーはその記事群すべてを自チャネルで必ずしも掲載する必要はありません。「この媒体の記事は自チャネルのどこにも載せたくない」「この記事をトップページでフィーチャーしたい」といった編成の権限はすべて個々のチャネルオーナーにあり、ノアドットは news.jp というドメイン自体の持ち主ではあっても、そのサブドメインで運営される各チャネル群の編成には一切関与しません。

サブドメインは、上図の sports のようにジャンルもあるでしょうし、同じく上図の toyoda のように企業名を冠してオウンドメディアを運営することも考えられます。地域の報道機関同士や地域コミュニティ紙・誌が共同でチャネルオーナーとなれば、地方広域デジタルメディアの雄となるかもしれません。また、もし多くの自治体がこのシステム上で住民への情報発信サイトを運営すれば、住民は引越しをしても以前と変わらないUIのサイトで情報収集できるようになり、利便性が増すでしょう。

以下からは、この新サービスについて具体的に検討している機能をもう少し紹介していきます。

新サービスの機能(検討中)

2024年2月現在、下記の機能を持つサービスを検討しています。

キュレーター側で記事全文を表示

繰り返しですが、新サービスでは個々のチャネルが記事全文を配信できるようになります。

記事の掲載ページを捕捉

記事が掲載されたページの全URLを、コンテンツオーナーが漏れなく捕捉できるようになります。

記事の更新削除を即時反映

コンテンツオーナーが記事を更新・削除した場合、全チャネルで漏れなく即時反映されるようになります。

コンテンツオーナーへの流入阻害をゼロに

各チャネルの記事ページは、現在の nordot.app ドメインおよび今後立ち上げる news.jp ドメイン同様に、そして現在の一部のキュレーターのサイトとは異なり、検索エンジンにヒットさせないことを徹底します。これにより、コンテンツオーナーのサイトへの検索流入を一切阻害しないサービスとなります。

なお、結果的に相反する課題❶「見出しのみでは検索流入を増やせない」は解決しない方針です。そもそも検索エンジンやアグリゲーター経由でしか記事への訪問を得られないということが、メディアがIT大手に流通を支配されてしまったことと同義なわけですから、あくまでもトップページやアプリで集客するチャネルを増やす方針を明確にします。

透明性のある収益分配

news.jp ドメインのチャネル群で生まれた収益は、明示されたレートでコンテンツオーナーとチャネルオーナーに分配されます。

なお、チャネルでのコンテンツの収益化手法は現行サービスと違って広告に限定せず、ドメイン全体でのサブスクリプション、ならびにコンテンツオーナー個別のサブスクリプション、個別記事、投げ銭といった直接課金コンテンツの販路としても機能させることを検討しています。

news.jp ドメインのチャネル群が目指すものは、コンテンツオーナーの権利をこれまで以上に確実に保護しつつ収益も拡大する、新しい流通ネットワークです。

もちろん、単に「記事全文がサイト内で表示できる」というような、検索エンジン以外のほとんどすべてのサイトが実現している常識的な仕様だけで、また現行サービスの課題を解決するだけで、あるいはまたチャネルオーナーが単に広告出稿でチャネルの認知を獲得するだけで、この目的を果たせるとは思っていません。既存のニュースサイト、ニュースアプリにないようなまったく新しい体験を生み出すことこそが、企画の中心になくてはいけないのは当然です。

そのために、今後もお客様、潜在顧客、市場の声も聞きながら企画を進めていきます。ユーザーインタフェース等の決定をノアドット一社で行うのではなく、チャネルオーナーたちと推進フォーラムを形成して協議していく、といったアイデアもあります。メディアが直面する課題の根本的解決に向けた形を、今後も皆様とともに作り上げていく所存です。

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