グリーンウォッシュの懸念からサステナビリティの発信をためらうクリエイターたち――ユニリーバが連携を呼びかけ

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ユニリーバが前例のない調査を行った。サステナビリティの推進に大きな役割を果たせるはずのコンテンツクリエイターたちが、調査によれば、サステナビリティ関連の発信に慎重になっているという。原因は、グリーンウォッシュの懸念や知識不足などだ。このような現状に対し、ユニリーバは気候問題に取り組む非営利組織などと組み、連携グループを立ち上げた。(翻訳・編集=茂木澄花)

ユニリーバの調査によると、ソーシャルメディアのコンテンツを制作するクリエイターの60%は、環境にプラスの影響を与えたいと考えている。にもかかわらず、大半のクリエイター(84%)は、コンテンツ内でサステナビリティへの言及を増やすことをためらっているという。クリエイターによるコンテンツは、サステナブルな行動を促す可能性を持っている。先の調査では「サステナブルな購買行動やライフスタイルに最も影響を与えているのはインフルエンサーである」と回答した消費者が78%にのぼった。だが、当のコンテンツクリエイターたちは、グリーンウォッシュなどの障壁を恐れて二の足を踏んでいる。

今回の調査では、英国、米国、ブラジル、フィリピン在住のYouTube、TikTok、Instagramのコンテンツクリエイター232人に対してアンケートが行われた。調査結果によれば、63%のクリエイターが、昨年と比べて今年のほうがサステナビリティに関するコンテンツを多く制作しているという。また、76%のクリエイターは、今後そうしたコンテンツの制作を増やしていきたいと回答した。

しかし、クリエイターたちはサステナビリティ関連コンテンツの制作を控えている。最大の障壁は「グリーンウォッシュになってしまう懸念」で、38%のクリエイターがこう回答した。他の障壁としては次のようなものがある。「コンテンツの中心テーマからサステナビリティに話を移すことの難しさ」。「何がサステナブルで何がそうでないかの考え方の変化」。「主要なサステナビリティの課題に関して十分な知識がないという感覚」。この3つは、いずれも21%のクリエイターが障壁になっていると回答した。また、18%のクリエイターが、過去の発言や行動を取り上げられて、ボイコットされることへの不安が問題だと回答している。

一方で、91%のインフルエンサーは以下のようなアドバイスが役立つと考えていることが分かった。

・サステナブルな生活に関するコンテンツやリソース
・サステナビリティについて質問できる直接的なサポート
・一般のコメントへの対応サポート
・企業や製品がサステナブルであるという、信頼性の高い説明をするためのトレーニング

こうしたニーズに応えるため、ユニリーバは、サステナビリティ関連の非営利組織や、新たに発足したクリエイターのコミュニティなどと連携を始めた。また、他社、代理店、テック企業にも協力を呼びかけている。クリエイターがソーシャルメディアのコンテンツを通じて、正確かつ確実にサステナブルな消費者の選択を推進できるよう支援するためだ。

この新たな連携グループに加わっているのは、Count Us In国連開発計画RareFuterraソリューション・ユニオンの専門家、および独立組織のクリエイター・カウンシルなどだ。クリエイター・カウンシルは、ソーシャルメディアのコンテンツを制作するクリエイターのコミュニティで、コンテンツの分野は旅行、美容、ライフスタイルなど多岐に渡る。今回の取り組みに対してアドバイスを行い、取り組みを具体化していくためにメンバーが集められた。

「気候変動対策のアクションは政府だけのものではありません。ずっと前から分かっていたことです。実際、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)のレポートには、人々の行動次第では需要側のCO2排出量を直ちに5%減らせる可能性があると書かれています」。Count Us Inの共同創立者であるエリック・レヴィーン氏はこのように語る。「クリエイターを中心に据えた新たなソリューションを推し進める連携の輪に加われることに、今までにない重要な意味を感じています。科学的根拠に基づく信頼できるガイドラインと、行動変容理論を活用すれば、クリエイターエコノミー全体で数十億人に影響を与えられる可能性があります」

この連携グループでは、ソーシャルメディアのコンテンツクリエイター、非営利組織、企業が集い、産業全体のデジタルソリューションを共創していく。科学と行動変容理論に基づいてよりサステナブルな行動を促す、正確かつ効果的なサステナビリティ関連コンテンツを増やすためだ。メンバーたちは現在、ソリューションを最新の気候科学に沿ったものにするため、フレームワークとガイドラインを作成している。

起業家、講演家、デジタル・インフルエンサーで、クリエイター・カウンシルのメンバーでもあるアダンナ・シュタイナッカー博士は次のように話す。「デジタルコンテンツのクリエイターとしての責任を感じています。環境やプラネタリーヘルスのためにより良いソリューションを紹介し、見る人に気づきを与える責任です。企業やクリエイターが、このミッションのもとに結束できるかどうかがカギとなります。科学に裏打ちされた情報を、人々の心に響き、世界規模で変化を及ぼすクリエイティブなストーリーに落とし込むのです。企業による十分な支援があれば、ソーシャルメディアのサステナビリティ関連コンテンツを充実させられます。人々に正確な情報を伝え、結束して環境の改善に貢献できるのです」

「ソーシャルメディア上のサステナビリティ関連コンテンツが、サステナブルな行動を促進できる可能性を持っているということはすでに分かっています。ただ、そのためには知識を与えてくれる有意義なコンテンツが必要です」。こう主張するのはユニリーバのチーフ・サステナビリティ・オフィサーであるレベッカ・マーモット氏だ。「クライメート・ウィークNYC 2023 (気候変動問題に取り組むイベント、9月17~24日開催)は、連携を深めるまたとない機会です。インフルエンサーが信頼されるかたちで重要な課題について発信することを、後押しできるでしょう」

ユニリーバは企業、非営利組織、ソーシャルメディアのコンテンツクリエイターに対し、連携グループへの参加を呼びかけている。
参加を希望する場合の連絡先は、Count Us In (contact@countusin.com)。

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