「なぜ」突き詰め、横浜の高3が新発見 オオサンショウモの「恐ろしい」能力

帰山さんが研究したシダ植物のオオサンショウモ=横浜サイエンスフロンティア高校

 横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校(同市鶴見区)3年の帰山凜咲さん(18)が、シダ植物「オオサンショウモ」の研究で新たな撥水(はっすい)の仕組みを発見した。「なぜ」を突き詰めた先に見つけたのは、植物が進化の過程で獲得した「巧妙過ぎて恐ろしい」ほどの能力だった。

 出合いは偶然だった。水槽に浮かぶオオサンショウモを眺めていた際、エアポンプから飛んだ水しぶきが葉の表面をころころと転がり落ちた。よく見ると葉に小さな毛がびっしり生えている。なぜ撥水するのか知りたいと、2年生で行う研究テーマに選んだ。

 顕微鏡で観察すると、毛の先端は泡立て器のような構造をしている。高さのある毛が空気を含みこみ、大きな浮力を得ていることも分かった。

 色水を使った実験中、葉に色が残り、撥水と吸着という相反する事象が同時に起きている可能性に気づいた。肉眼だと完全撥水に見えていた現象は、毛の先端極小の水滴を残しながら、大きな水滴が転がり落ちているものだと分かった。

 今年3月の学会で発表すると先行研究の存在を指摘された。それでも諦めずに研究を続けたのは違和感があったからだ。

 専門家が毛の先端のみ水を吸着できるとする一方、帰山さんの実験では毛の側面にも色水が付着し、矛盾した。表面構造を詳しく調べ、側面にも吸着部分があることを突き止めた。

 オオサンショウモは中南米原産。スコールの多い土地でも二つの機能を兼ね備えることで、水をところどころで吸着しながら、空気の層に入るのを押しとどめていると考えた。泡立て器のような形によって、雨粒の重みが増えるほど接触面積が増え、水を食い止める力が強くなるとみられる。毛の先端の不思議な形が意味を帯びた。

 「うれしかったけど、恐ろしいような気持ち」。撥水の仕組みを発見し、帰山さんが感じたのは自然への畏怖だった。

© 株式会社神奈川新聞社