長崎の軍艦島 8年ぶりに大規模調査 居住施設地区内の全36棟 専門家「劣化かなり進んでいる」

小中学校の校舎として使われた「70号棟」内部を調査する野口教授(右から3人目)ら=長崎市、端島

 世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つ、長崎県長崎市の「端島炭坑」(軍艦島)に残る高層アパート群などの劣化状態や構造耐力を科学的に分析するため、国内の建築や土木の専門家らが10月29日から11月5日にかけ、現地調査を実施している。居住施設地区内の鉄筋コンクリート(RC)造建築物全36棟が対象。大規模な調査は2015年の日本建築学会の調査以来、8年ぶり。
 調査しているのは、建築研究振興協会(東京)の「軍艦島建築物の劣化状態・構造耐力評価検討委員会」。15年調査の中心だった東大大学院の野口貴文教授(建築材料学)が委員長を務める。
 15年の調査結果などを基に長崎市は同年、保存管理計画を策定。保存すべき建築物の優先順位を定め、段階的に保存整備を進めている。今回は劣化の進行状況を明らかにし、建物自体の荷重を支える柱の耐力や地震発生時の耐震性を再評価。前回の結果も踏まえ、階全体が崩落する「余命」を予測する。
 調査メンバーは大学や研究機関、大手ゼネコンの研究員ら延べ約250人で目視調査を実施。4日、小中学校校舎として使われていた「70号棟」(1958年建築)などの柱や梁(はり)、床を対象に劣化状態を観察。6段階の劣化レベルのうち、どの段階に該当するかを確認した。野口教授は「8年前と比べるとかなり劣化が進んでいる。進行状況を明らかにし、『余命』の予測結果を出すことで、今後の保存・管理や活用の検討に役立てられたら」と話した。
 国内最古のRC造アパート「30号棟」(1916年建築)など、安全性の面から人が立ち入ることができない建築物は12月下旬、ドローンを活用して調査する。来年3月をめどに調査結果を取りまとめ、同9月ごろに開かれる日本建築学会の大会で発表予定。

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