12日投票の福岡県・飯塚市長選挙をデータから読み解く!選管のデータ公開の改善ポイントも解説(データアナリスト 渡邊秀成)

福岡県飯塚市長選挙(11月5日告示、12日投開票)が予定されています。この市長選挙が行われる飯塚市の特徴について観察したいと思います。福岡県飯塚市はこの位置になります。福岡市、北九州市にほど近い位置にあります。

飯塚市の位置関係(筆者作成)

この飯塚市は当年3月31日現在で国が所有する固定資産のうちアメリカ軍や自衛隊の基地施設に供する固定資産(土地、家屋、工作物)について交付される総務省の国有提供施設等所在市町村助成交付金(いわゆる「基地交付金」)及び施設等所在市町村調整交付金の対象地域の一つです。

飯塚市には飯塚駐屯地があります。赤色部分が基地交付金対象自治体です。

赤色部分が基地交付金を受け取っている自治体(筆者作成)

この場所で行われる市長選挙ですが、今年(令和5年/2023年4月23日)の飯塚市議会議員選挙では有権者数が10万3010人。

投票者数5万2312人、投票率が50.78%、投票した人のうち期日前投票数が2万0966人、不在者投票数が390人でした。また全国的に期日前投票制度を利用する有権者が増えていますが、飯塚市議会議員選挙では投票した人のうち約40%は期日前投票制度等を利用しています。

市長選挙の投票率の推移は、飯塚市公式サイト内のページで公開されています。 

市長選挙直近2回の投票率は38.35%、43.14%と40%前後で推移をしています。国政選挙、地方選挙ともに投票率が低下傾向ですが、投票率が50%を切る状況で有権者の意思が市政へ反映されていると言えるか疑問に感じます。

飯塚市の政党別得票数は?地元出身の大物政治家の影響も!

そして、飯塚市有権者はどのような政党に投票する傾向があるのかを国政選挙データから見てみます。飯塚市有権者の国政選挙における有権者の投票政党は下図のようになっています。

飯塚市の政党別得票率

政党別得票率を見ると、上位から自由民主党、公明党、立憲民主党と続きます。自由民主党、公明党で50%前後の得票率になることがわかります。

自由民主党、公明党の得票率が上位を占める地域は多いのですが、飯塚市は麻生太郎氏の出身地であることも特徴の一つに挙げられます。

総務省等が公表する資料を元に、飯塚市に所在が確認できる政党支部に献金する企業、個人、各政治団体が各業務発注している企業、個人とのつながりを図に落とし込んだものが下記になります。

ネットワーク図(筆者作成)

これらの図を作成すると、地元のどのような企業が、どのような政党支部と付き合いがあるのか等がわかり、地域の様子を推測するにはとても役立ちます。

自身で全国各地域の公開データを集め、データを整理し多くのグラフを作成すると自治体単位、業種単位、選挙区単位等で、細かく組織化されている政党とそうではない政党に大きくわかれることを実感します。

飯塚市に関係する政治団体のネットワーク図を作成すると、麻生氏に関連する団体に対する全国の各企業からの献金が確認でき、その影響力の大きさを改めて感じることができます。

市長選でもこのようなネットワークが何らかの影響力を持つものと推測されます。

過去の選挙結果は最低5回分公開するべし

ここまでのグラフ等は公開資料をもとに作成しました。ただ官公庁が公開する資料からこれらのグラフ等を作成するまでには多くの工数がかかります。総務省が「統計表における機械判読可能なデータ 作成に関する表記方法」を呼びかけていますが、それに対応した形式で選挙データ公開をしようとする都道府県市区町村選挙管理委員会はほとんどありません。

少しでもはやく各選挙管理委員会が総務省が提唱する形式で、選挙データを公開してほしいと思います。ここからは総務省が提唱する形式で飯塚市の選挙結果が公開されているかどうか検証したいと思います。

飯塚市選挙管理委員会が公開する選挙データはHTML形式で公開されています。セル結合等もされていないのでデータ読み込みがしやすい形式で、データ処理に適しているので総務省形式に合致していると考えても良いと思います。

また選挙立候補者の年齢、住所、所属が掲載されていることも、閲覧者のことを考えてページが作成されていると思います。地方自治体が公開する選挙資料には候補者年齢、所属政党、年齢、職業といった情報が掲載されていないことが多く、それらを調べるために選管に問い合わせをする必要がありますが、最初から公開されていれば、有権者等は候補者がどのような人なのかをイメージしやすくなります。

総務省の衆議院選挙、参議院選挙の選挙結果調べには、下記のように候補者の所属政党、年齢、ウェブサイト等の情報が掲載されています。

候補者情報(令和元年7月21日執行 参議院議員通常選挙結果調 p78、79より) 

この内容で且つ機械的処理可能な形式で候補者情報を各地方自治体で掲載されると、これから投票権を得る若い人たちにも、使い勝手が良いサイトになると思います。

そして過去の選挙結果が市長選挙が平成29年まで、市議会議員選挙が平成31年までとWEBサイト上から閲覧できる情報がとても限られています。可能であれば前5回程度が掲載されていると、有権者の投票行動がどのように推移しているのかを知ることができます。

投票率向上等を考えるのであれば、各選挙の5回分は掲載して欲しいと思います。また選挙運動収支報告書は要旨ではない状態で、誰もが閲覧できる状態で公開してほしいと思います。

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選挙運動収支報告書にはさまざまな情報が掲載されており、その支出項目が妥当であったのか?検証が必要な場合がしばしばあります。機械的データ処理が可能な形式で選挙運動収支報告書が公開されれば、各項目の異常値検出等がスムーズにできるようになります。

選挙の公平性、透明性を高め、有権者の選挙への信頼性を高めるためにも選挙運動収支報告書は機械的処理可能な形式で、全てオープンにして公開してほしいと思います。

今回は、近々投票が予定されている飯塚市長選挙に関連して、地域の特徴と選挙管理委員会が公開するデータについて観察をしました。

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