かつお節香る市場に 八百屋の3代目が支援募る 「昼の市場のにぎわい取り戻す」 沖縄・那覇市

 かつお節の香りを再び市場に―。那覇市安里の栄町市場にあった削り節の店が高齢化や後継者不足などで廃業し、今は一つも残っていない中、削り節の販売を「復活」させようと、市場内の老舗八百屋「はいさい食品」3代目の上原壮介さん(32)が奔走している。まずは八百屋で削り節を提供し、将来的に専門店のオープンも視野に入れて資金調達のためのクラウドファンディング(CF)を始めた。だしのもととなる削り節を起点に、食材を扱う既存店の活性化や新規出店を図り、昼のにぎわいを取り戻す狙いがある。(社会部・島袋晋作)

 上原さんによると、栄町にはかつて削り節の店が3、4軒ほどあった。最後の店がなくなったのは数年前。その後、削り節を求めて市場を訪れる客が廃業を知り、落胆する様子を何度も目にした。かつお節を八百屋に持参し、削ってほしいと頼む客もいた。

 市場中にかつお節の香りが漂っていた幼少期を思い起こすにつれ、もう一度削り節を提供したいという思いが募った。

 調べてみると、かつお節の消費量は沖縄が全国一。試しに買って削ってみると、店の前の通りにまで広がる香りに驚いた。趣味の食べ歩きでかつおだしの効いた「かちゅー湯」を飲んで、おいしさに感動した。

 「需要はきっとある」とビジネスの可能性を感じ、自ら事業を起こそうと決意。準備資金100万円を調達するため、10月下旬からCFで協力を呼びかけ、8日夕までに30万円以上が集まっている。

 栄町一帯は、夜の飲食店が繁盛し華やかに映るが、昼はシャッターを下ろした店も少なくなく、「かつてのにぎわいはなくなっている」と語る上原さん。

 野菜や肉類など食材がそろう市場において、削り節は欠けてしまっていた要素の一つ。削り節の販売復活で昼の既存店が繁盛し、新規出店も促される好循環を生み出せるのではないかと考える上原さんは「昼も夜も強い、全国的にも面白い市場になりますよ」と目を輝かせた。

クラウドファンディングのURL https://www.picture-book.jp/projects/4201

かつお節で栄町を一層盛り上げたいと意気込む上原壮介さん(左)と、取り組みを応援する伯母の山里光恵さん(中央)、糸数多美子さん=8日、那覇市の栄町市場

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