知ってた? タイトリストの「ウェッジフィッティングアプリ」 合うグラインドが一発で分かる

ツアー会場でアプリを用いたウェッジフィッティングを受ける中西直人(撮影/服部謙二郎)

◇国内男子◇三井住友VISA太平洋マスターズ 事前(8日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7262yd(パー70)

太平洋御殿場の打撃練習場で、中西直人は自身のウェッジを打っては、ツアーレップ(用具担当)が持つiPad(アイパッド)の画面を見て言葉を交わし合っていた。単にトラックマンの数字について話しているのかと思いきや、ウェッジのフィッティングアプリを使いながら試打をしているという。面白そうなので、そのやり取りをのぞいてみた。

そのアプリはタイトリストのウェッジフィッティング用の高い専門性を備えたツールで、弾道測定器と連動して最適なモデル(バウンス)をはじき出すという代物。今年からフィッティングの現場では導入が進んでいるようで、時おりツアーの現場でも、今回のように実際にフィッティングをしたり、傾向を調べたりしているようだ。一般のゴルファーにはなかなか馴染みがないかもしれないが、タイトリストの直営店や、同社のフィッティングシステムを導入しているスタジオなどでは同様のフィッティングも受けられるという。

「まずはお持ちのウェッジで、フルショット、ピッチショット(15~20ydのアプローチ)、フェースを開いたピッチショットの3種類の打ち方を各番手3~5球ずつ打ってもらいます」と説明するのは、実際に中西とやり取りをしていたタイトリストのフィッティング担当・沢田季生(さわだとしき)氏。52度と60度のウェッジを入れる中西においては、「52度は開いて使わないので2種類の打ち方(フルショットとピッチショット)のみ採取しました」と、2本のウェッジでトータル15球、試打自体はアッという間に終わった。そこから中西へのレクチャーが始まる。

沢田氏からレクチャーを受ける(撮影/服部謙二郎)

中西の場合、52度のウェッジは「ボーケイSM9」のFグラインドでバウンス8度、60度は同じくSM9のLグラインドでバウンス4度が推奨モデルとはじき出された。ただし、これはトーナメントのように地面が硬い条件下での答え。例えば地面の設定をソフトに変えると、52度は同じFグラインドでもバウンス12度、60度はKグラインドのバウンス14度という違う結果(バウンスが増えた)となった。

「地面が硬い場合はやはりバウンスが少なめの傾向になります。ただ、ここではじき出されたモデルはあくまで参考なので、ここからさらにお話をして、好みを聞き、最終的にモデルを絞っていきます」と沢田氏。地面の硬さはソフト、普通、硬いなど5段階の設定があって、それ以外にバンカーの硬さや自信度も5段階に調節可能。各設定を変えるごとに推奨グラインド(もしくは推奨度合い)が変わる仕組みだ。

それにしても、こうした“推奨”は何を元にはじき出されているのか。画面をスワイプしていくと、あるひとつのグラフが目に留まった。

画面中央のグラフが入射角とシャフトの傾きを表す(撮影/服部謙二郎)

縦軸が入射角で、上にいくほどシャロー(鈍角)、下にいくほどスティープ(鋭角)。横軸がシャフトリーン(傾き)で、右にいくほどハンドレート、左にいくほどハンドファーストを示す。その中に、「P」(ピッチショット)、「F」(フルショット)、「O」(オープンフェース)という記号がプロットされ、各ショットをどのように打っているのかが一目で分かる仕組みになっている。例えばPがグラフの左下にあれば、スティープかつハンドファーストで上から打ち込むようなアプローチをしていることになる。

「右上(シャローかつハンドレート)にいくほどローバウンス、左下(スティープかつハンドファースト)にいくほどハイバウンスを推奨しています」(沢田氏)と、入射角とシャフトリーンの組み合わせによって、バウンスの傾向がある程度絞られるという。面白いのは、PとOの場所が同じ人もいれば、けっこう違う人もいるということ。つまりフェースを開いたときに、普通のアプローチと同じように打つ人もいれば、ハンドレートに打つ人もいるということだ。中西以外にも小浦和也のデータを見せてもらったところ、まさにPとOの位置が離れていた。入射角は同じニュートラルだったが、PがOに対してだいぶハンドファーストだった。

小浦和也の計測データ。「P」と「O」の位置が離れている(撮影/服部謙二郎)

トラックマンやフライトスコープなどの弾道測定器が普及したことで、ウェッジの世界にもこうした最先端のテクノロジーが導入されつつある。実に良くできたフィッティングアプリ。一度試してみたいと思うのは、筆者だけではないだろう。(静岡県御殿場市/服部謙二郎)

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