自民・杉田水脈議員の在日特権「存在する」投稿、ノンフィクションライター安田浩一さんは「確実なヘイト」

安田浩一さん(本人提供)

 自民党の杉田水脈衆院議員が今月4日、X(旧ツイッター)で「在日特権」などを取り上げた動画を引用した上で、特権は「実際には存在します」と投稿、批判が広がっている。「在日特権」とは、在日コリアンがさまざまな「特権」によって日本人を搾取しているとする、憎悪をあおる差別的デマで、その存在は明確に否定されている。同氏の発信を「確実なヘイトスピーチ」と指摘する差別問題に詳しいノンフィクションライターの安田浩一さん(59)に聞いた。

◆手あかにまみれたデマ

 -投稿をどう見たか。

 「思わずのけ反った。手あかにまみれたデマ、陰謀論、都市伝説の類いに、国会議員が乗せられるとは。確実なヘイトスピーチと思う。彼女は根拠を示さず『在日特権』があると言い切った。インターネットのデマを国会議員が具体例を示さず堂々と口にしたことに驚き、怒りとともにあきれている。特権とは優越的権利をいうが、日本国籍の日本人以上に、特定のエスニックグループ(少数民族集団)が特権を有している事実はない。明確に差別、差別扇動を目的に書かれたとしか考えられない」

 -「在日特権」はあるのか。

 「これまでに当事者はもちろん研究者、自民党の政治家も含め、ことごとくその存在を否定している。『在日特権』の矛先にされている生活保護(受給しやすいというデマ)や年金(支払わなくても支給されるというデマ)の所管団体や役所にも何度も話を聞いたが、みな否定した。他に電気、水道が無料になる、税金が免除されるなどというものもあるが、事実無根の与太話だ。このデマは単なる差別扇動の道具で、ヘイトスピーチそのものだ」

 -杉田議員の投稿に触発され、特別永住者や通名が「特権」だという言説がネットで広がる。

 「どちらも特権ではない。1951年調印のサンフランシスコ平和条約で日本が国家主権を回復した際、日本国籍を有していた旧植民地出身者は法的に外国人となった。そうした日本人だった人に、できるだけ安定した地位を与えようと政府が特別永住者の措置を取った。むしろ彼らはそれ以外の法的権利を失い、健康保険や年金も無資格を強いられ、いまだ選挙権すらない。優越的権利は何もない。通名も全ての外国人に認められていること。本名と通名を使い分けている人が多いのは、すなわち民族名を名乗ることを躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ない、日本社会の差別性を表している」

© 株式会社神奈川新聞社