ヒット作連発で“神”と呼ばれる監督が描く最旬韓国ドラマとは?

「冬のソナタ」がNHKBSで日本初放送され、日本に韓流という一大ムーブメントが巻き起ってから、今年で20年。今もなお進化を続ける韓国ドラマにおいて、ここ数年、新たに注目を集めているジャンルが、BL(ボーイズラブ)と呼ばれる男性同士の恋愛模様を描いた作品だ。

そこで本コラムでは、韓国BLドラマの名監督の手腕やキャスティングからヒットの法則をひも解いてみる。今、まさに花盛りを迎える魅惑の韓国BL。その世界を知れば、新しい恋が見つかるかも?


細やかな心理描写と映像美が魅力
ヒット作連発で“神”と呼ばれるファン・ダスル監督

2020年頃から急速に増え始めた韓国BLドラマ。この3年間で40を超える作品が制作され、今では国内外で愛される人気ジャンルとして確立された。なかでもファンが多いのが、韓国BLドラマの先駆け「君の視線が止まる先に」(20)や、続編が制作されるほど好評を博したヒット作「To My Star」シリーズ(21)を手がけたファン・ダスル監督の作品だ。

その演出力から「神ダスル」の愛称で絶大な支持を集める彼女の魅力は、細やかな心理描写と映像の美しさにある。

韓国BLドラマは尺が短く気軽に視聴しやすい一方で、作品によっては展開が唐突になり、視聴者が感情移入しきれないといった短所があるのも事実。しかし、ファン監督はそういった制限があるなかでも登場人物の心の動きや感情の高まりを細やかに描き、没入感を高める手腕がずば抜けている

きらめきと揺れを丁寧に表現
何度も見返したくなる独特の余韻

映像美については人気作すべてに共通している要素ともいえるが、やはり特筆したい魅力の一つ。韓国BLドラマは他ジャンルの韓国ドラマに比べて予算が少なく、大掛かりなセットや最先端の技術で魅せる華やかさこそないもの、青春のきらめきや揺れ動く感情を丁寧に表現しているのが印象的だ

特にファン監督の作品は、劇中音楽の落ち着いたトーンとも相まって、穏やかで優しく、何度も見返したくなる独特の余韻がある

ドラマのメイキング映像や俳優たちのインタビューからも出演者と対話しながら丁寧に作品と向き合う監督の姿勢が伝わってくるが、惹かれ合う二人の空気感や関係の深度を表現するため、作品ごとに撮影技法や光の使い方といった演出を工夫し、細部まで綿密に練り込んでいる点が熱い反響につながっているのだろう。

芸術的な映像美が話題の「8番目の感覚」
韓国&南アフリカ共和国出身の監督が共同演出

一方、大学のサーフィンサークルを舞台に先輩と後輩として出会う2人のラブストーリーを綴った「8番目の感覚」(22)も、映像美が話題になった作品の一つ。同作はパク・チャヌク監督の映画『お嬢さん』に携わったペク・イヌと、南アフリカ共和国出身のベルナー・ドゥ・プレシスが共同で演出と脚本を担当。

ペク監督は「君の視線が止まる先に」(20)、「To My Star」(21)にプロデューサーとして関わっていたこともあり、公開前からファンの間で注目を集めていたが、照明の色味や衣装などディテールにまでメタファーを落とし込む両監督の演出力と芸術的な映像で高い評価を受けた

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Text:omo!(オモ)
Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)

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