歳暮ギフト 市場縮小も個人向け堅調 “集い”需要で鍋物充実 利益重視体質へ転換目指す

贈答文化の希薄化や企業の儀礼ギフト廃止が進み、縮小が続く歳暮市場。コロナ禍を機にさらに厳しくなったものの、会えない家族や知人に贈る、新たな需要が生まれた。今年は人と会う機会が増え“集い”需要向けに鍋やパーティー商材を強化して巻き返しを図ろうとする動きもみられる。

2022年のギフト市場は5年前に比べて1割減少したと言われる。コロナ禍でビジネスの場でも慣例を見直す機会となり、得意先への年賀状とともに中元・歳暮も虚礼とされ、廃止する動きが広がった。

その一方で家族や親戚、近しい人などに贈るパーソナルギフトは堅調にあり、移動や集まることが制限された3年間は、その傾向がより強まった。百貨店では歳暮・中元カタログや広告の前面に「贈り物」のワードを多用化することで、儀礼的なイメージを薄めた。

品揃えでは、有名店の洋菓子や地域特産品など独自の調達力を生かしたアイテムを充実。個人間の贈答や自家需要の喚起に取り組んでいる。

この冬は、コロナ禍で自粛していた年末年始行事が再開される見込みとなり、各社で“集い”需要の強化が目立つ。ローストビーフや魚卵に加えて、料亭や有名店の監修、ブランド肉や魚などを切り口にした、鍋のセットが充実している。「外食需要が戻ったとはいえ高齢者ほど抵抗感が残り、イエナカ消費は依然強い」との見方だ。

また物価高の影響で、送料無料や割引サービス付きの商品が以前にも増して好調だ。百貨店でも価格にシビアな顧客を囲い込むために、強化政策として注力している。とはいえサービスの利用者が増えるほど負担が膨らむ。この悩ましい課題を相殺するため、利益率が高い定番商品の強化は必須だ。

阪急阪神百貨店では、高島屋との定番品の共同取り組みのなかで、中元から独自の企画商品を開始した。有名洋菓子店の冷菓など、定番品メーカーに両社だけの商品を作ってもらうことで、目新しさを出して他社との差別化を図る考えだ。近鉄百貨店ではカタログ編集を大幅に変え、定番を目立たせて購入率を高めた。

中元・歳暮の売上縮小を食い止めるだけでなく、利益重視の体質へと変化しようとしている。

© 株式会社食品新聞社