幕末の天誅組160年 次代に伝える「明治維新の魁」 県内4市町村がシンポやイベント重ねPR - 奈良クローズアップ

再現された天誅踊りを踊る五條市職員=10月28日、天理市杣之内町のなら歴史芸術文化村

 幕末の大和で尊王攘夷(じょうい)派志士が決起した天誅組の変から今年で160年。ゆかりの奈良県内4市町村で構成する「天忠組(天誅組)市町村連携協議会」は9、10月に計3回、記念シンポジウムを開いた。結成から10年を迎えた同協議会はこれまで、各地でイベントを開くなど一定の成果を挙げてきたが、「天誅組の意義を県内外に広める」という目標達成はまだ道半ばだ。後進の育成などの課題を掲げ、活動を続けている。(高瀬法義)

 「維新のさきがけ」とされる天誅組だが、同じ幕末に活動した新選組や海援隊などに比べると知名度が低い。そのため、天誅組を広く知ってもらうことで地域の活性化を図ろうと、2013年の天誅組150年を機に天忠組市町村連携協議会が結成された。

 決起の地の五條市▷終焉(しゅうえん)を迎えた東吉野村▷多くの郷士たちが参加した十津川村▷多くの人が支援した安堵町―の県内4市町村が参加。「天忠組」の名称は「自らを顧みず、国のため命を懸けた志士たちにふさわしい」などの理由で選ばれた。

 160年を記念したシンポジウムは天理市杣之内町のなら歴史芸術文化村を会場に計3回開催。天誅組を「知る」をテーマとした第1回(9月30日)は、映像作家・保山耕一さんの映像作品「天忠組」を上映。会場近くの長岳寺では志士たちの160年忌法要が営まれた。

 第2回(10月9日)は「語る」をテーマとして、天誅組志士の子孫という岡見知紀・県立橿原考古学研究所主任研究員が、自らの先祖に関する新資料を交えて講演。また、4市町村の首長らによるパネルディスカッションも行われた。

 「伝える」の最終回(10月28日)は「天誅組の変」直後から踊られ、現在は絶えてしまった「天誅踊り」を再現。大和の郷土芸能実践研究家の小関吉浩さんの音頭で、五條市役所の若手職員が踊りを披露した。大和の民俗芸能を研究する武藤康弘・奈良女子大教授による解説もあった。

 協議会結成の旗振り役を務めた岡本彰夫・県立大学客員教授は天誅組を顕彰する意義に「利他」「責任」「再生」を挙げ、「世のため、人のために身を捧げ、最後に責任を果たした志士たちを歴史にとどめ教訓とすべき」とする。

 しかし、結成当初は「戦争賛美だ」「今さらなぜ天誅組なのか」などと批判もあったという。それでも、東京都や志士ゆかりの地の高知県などでイベントを開くなどして、少しずつファンを増やしていった。

 協議会会長の水本実・東吉野村長は「多くの人に天誅組を知ってもらえたとの手応えを感じる」と10年間の活動を振り返る。

 しかし、近年はコロナ禍の影響もあり活動が一時停滞。天誅組の知名度も高くなったとは言えず、160年を節目に活動を盛り上げなければならない。そのための課題としては、天誅組を語り伝えるための後進の育成が必要だ。

 東吉野村天誅組顕彰会の桝本君孝会長は「学校でも子どもたちが郷土の歴史を学ぶ機会を増やすべき」と訴える。

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