「アプローチはオープンに構える」は過去の話? 若手に広がるスクエア or クローズスタンス

ラフからクローズスタンスで打つ中島啓太。手元が足にぶつかりそう(撮影/服部謙二郎)

◇国内男子◇カシオワールドオープン 2日目(24日)◇Kochi黒潮CC(高知)◇7335yd(パー72)

「オープンスタンスで構えてスタンスなりに振りましょう」。グリーン周りのアプローチをこのように教わった方は多いのではないだろうか。

左足を1歩引いてクラブをスタンスなりに、飛球線に対してカット軌道(アウトイン軌道)で振っていく打ち方。オープンスタンスの推奨については、これまでレッスン本などで「振り幅が小さいアプローチは左腰を切った状態を事前に作ってヘッドの抜けを良くする」「上からカットに入れやすくするため」など、いろいろな理由が書かれてきた。そのためか「アプローチはオープンに構えるもの」と、ただ妄信しているアマチュアは多い気がする。

実際に国内男子ツアーを見ていると、若手選手を中心にオープンスタンスが減っていることに気づく。スクエア(なんならクローズも)に構え、あまりヘッドを上から入れない選手が増えた。

中島啓太は松山英樹のアドバイスでオープンから変更

「アレ? オープンじゃないぞ」。最初にスタンスの変化に気づかされたのは、賞金ランキングトップを走る中島啓太だった。スクエアスタンスで打ったり、ときにクローズに構えたりするシーンが散見される。話を聞くと、実は中島もゴルフを始めたジュニア時代から昨年まではオープンに構えていたという。考えを改める転機となったのが、今年1月に出場したPGAツアー「ファーマーズインシュランスオープン」の会場で受けた松山英樹からのレクチャーだった。

こちらもラフからクローズ(撮影/服部謙二郎)

「アメリカのラフで松山さんが打っているのを見て、クローズっぽく打っているなと思って。そのあと本人に聞いたら打ち方を教えてくれたんです」と中島。「松山さんが言っていたのは、クローズスタンスにして左足で壁を作って、バウンスが上手く当たれば強く振っても飛ぶことがないということ。それならラフからもしっかり振っていけるということでした」

そう話した中島は左足を1歩前に出し、自分の手を左の太もも前側に当てるように振る打ち方をレクチャーしてくれた(実際には当たるというよりは擦っているように見える…)。「左にしっかり壁を作れるからインパクトが緩まないんです」。クローズスタンスにしても窮屈感はなく、上手くバウンスを当てるように打っているとのこと。中島にとってはアメリカの芝に対応するために始めたものだったが、それ以来、通常のアプローチでもスタンスを開くことはないという。ちなみにオープンからスクエアにしても、スイング軌道は変えていないそうだ。

スタンスはスクエア(撮影/服部謙二郎)

“アプローチ名人”の米澤蓮もスクエアスタンス

若手プロの間でアプローチの巧みさに定評のあるプロ3年目、米澤蓮のスタンスもスクエアだ。アプローチの柔らかさはベテランプロも一目置くとされる米澤によれば、「スピンの回転軸を真っすぐにして打ちたいのがベースにあって。スタンスをオープンにしてカットに振り抜くと、どうしてもスライス回転になり、落ちた後の傾斜によっては余計に転がってしまう」ことがその理由。例えばスライス回転のかかったボールが右傾斜のグリーン面に落ちると、余計に右に流れていってしまうということだ。さすがアプローチ名人…。

若手の中でも指折りのアプローチ巧者 ※撮影は2023年「ACNチャンピオンシップ」(撮影/服部謙二郎)

米澤がスクエアスタンスにこだわるのは、もう一つ理由がある。「カットに振るとどうしてもフェースの先に当たりやすくなり、いろんな球が出ちゃうのでちょっと計算ができない」と、打点のズレやすさにより距離感が作れないのだという。JGAナショナルチームのガレス・ジョーンズコーチからも太鼓判を押されたという米澤のアプローチ。「ジョーンズさんに出会って(打ち方が)型にはまった感じはあります」と、より自信を持って打てるようになった。アプローチも基本はフェースに球を乗せ、つかまえることで距離感を出すのが米澤式だ。

アプローチに悩んでいる方は「アプローチ=オープンスタンス」と決めつけるのではなく、いろいろなスタンスを試してみるのも悪くはないだろう。今週、米澤は首位と6打差の8位タイ、中島啓太は26位タイで週末を迎える。彼らのアプローチがテレビ中継で映るとき(もしくは現地で観戦している方)は、ぜひ参考にしてもらいたい。(高知県芸西市/服部謙二郎)

両足は真っすぐでスタンスはスクエア(撮影/谷口愛純)

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