毛ガニの甲羅側から雌雄を見分ける「漁師の目」 画像の深層学習で正確、高速に実現

東京理科大学、金沢大学、神奈川大学の共同研究グループは、ケガニのオスとメスの判定を甲羅の画像から深層学習を用いて明らかにした。

北海道ではケガニの漁獲は厳格に制限され、特に、メスの捕獲は研究目的で許可を得なければ全面禁止となっている。ケガニの雌雄は外見で見極められれば捕獲がしやすく、メスの乱獲防止にも重要だ。雌雄判定は生殖器の形が異なるため腹側から目視で容易に判別できるが、捕獲時は甲羅側を上にすることが多く、目視での雌雄判定は困難だ。しかし、漁師は背側を見て判別が簡単だと語る。

そこで、今回の研究では深層学習を用いてケガニの甲羅側の画像および腹側の画像から雌雄判定を行なった。北海道長万部で捕獲されたオス60匹、メス60匹の写真画像に深層学習(説明可能AI)を適用した。深層学習のアルゴリズムは、AlexNet、VGG-16、ResNet-50のニューラル・ネットワークを使用した。

その結果、VGG-16の正答率が最も高かった。判断根拠として影響している箇所を表すヒートマップ※は、腹部側で性器の形の近くで強く現れた。オスのヒートマップでは甲羅の底部が強調されていたが、メスのヒートマップでは甲羅の上部が強調されていた。深層学習アルゴリズムに基づく甲羅側の画像認識により、人間の目による検査よりも正確な性別識別が可能になった。

ケガニは重要な水産資源であり、その保護のため深層学習による雌雄判別が可能であることは重要な知見であり、効率的な畜養技術の開発にも役立てられる。さらに本成果である深層学習のアルゴリズムは他種のカニにも適用でき、カニの雌雄判別の効率的な方法の確立に寄与できるとしている。

※編注:データの強弱を色で可視化する解析ツール

論文情報:

【Scientific Reports】Gender identification of the horsehair crab, Erimacrus isenbeckii (Brandt, 1848), by image recognition with a deep neural network

© 大学ジャーナルオンライン