田中圭が「1万人の第九」メインパーソナリティーの大役に「荷が重い。でも今は楽しさ9割、不安1割」

12月3日に大阪城ホールで開催される「サントリー1万人の第九」でメインパーソナリティーを務める田中圭が、総監督・指揮の佐渡裕氏と共に取材会に参加。大役を担う心境や同コンサートの魅力を語った。なお、公演の模様は、12月16日にTBS系で「サントリー1万人の第九 ひびきあう、今 ~MORE THAN MUSIC~」(午後4:00=MBS制作)として放送される。

「1万人の第九」は、1983年にスタートし、今回で41回目となる、1万人がベートーベンの「第九」を合唱するコンサート。総監督・指揮は、今回で25回目となる世界的指揮者・佐渡氏が務める。田中は、佐渡氏と共にコンサートを盛り上げる今年のメインパーソナリティーとして登場。今年は「ブラボーの復活」をテーマに、2019年以来4年ぶりに、一般から募集した1万人の合唱団を大阪城ホールに迎え、力強い歌声とハーモニーを奏でる。

出演オファーに「なぜそんな大役を俺に?…」と率直な思いを口にする田中。今年、日本テレビ系連続ドラマ「リバーサルオーケストラ」で指揮者役を演じたことが、その理由の一つであろうと推測し、「役づくりのために半年間ほどクラシックや指揮について勉強していました。実際に佐渡さんの指揮を参考にし、『1万人の第九』の過去の演奏も視聴していたんです。最初は荷が重いと感じましたが、マネジャーからも『絶対にやった方がいいですよ』と言われ、こういった機会はなかなかないと思って出演を決めました」と、オファーを受けた理由を語る。

加えて、「『1万人の第九』は素晴らしい企画で、参加できることに喜びを感じています。当日の皆さんのエネルギーや音を生で聞けることはぜいたくなこと。今は、楽しみが9割ぐらいで、残り1割は不安です。MCもやったことがありますが、やっぱり自分は俳優なので大丈夫かな?という不安は残りつつも、すごく楽しみにしています」と笑顔を見せた。

今回は、4年ぶりに1万人の合唱団が大阪城ホールに集結。佐渡氏は「この3年間、なんとか続けてきたものが、途切れることなく、またこうして皆さんと再会できる年を迎えられたことが大きな喜びです。続けてこられた理由は、やはりベートーベンという人の作品が本当に素晴らしいからだと思います。クラシックを身近に感じることはないし、オーケストラの演奏会にも行ったことがないという人がたくさんいる中で、気軽にその世界に触れてもらえたら、すごく面白い世界がありますよ」と呼び掛ける。

田中に対しては「本当に適役だと思っていて、ドラマも僕も見させてもらいましたし、なんなら僕の代わりに指揮していただいて(笑)」と冗談交じりに話しつつ、「本当に素晴らしい俳優さんで、もの作りのことをよく分かってらっしゃるし、僕は楽譜があって音楽を作っていきますが、役者さんは台本があって、脚本があって演出家がいたり、いろんな人の協力があって作品を作っていく。その部分でとても共感できたので、本番は司会進行とか、やらなきゃいけないこともあるでしょうけど、もう本当にそうした大きな創造物とお客さんの間に立って楽しんでいただければ、最高だと思っています」とエールを送る。

さらに、「『喜びの歌』の『喜び』って何なのか、ずっと考えていた」という佐渡氏は、「やはりコロナが収束して、こうしてみんながまた集まって一つのものを、力を合わせて作れる。これがベートーベンが一番望んでいたことなんだな」と感じているそうで、「難しいドイツ語による歌詞を必死で覚えて、家族でも友達でもない人たちが集まって何か作ろうとしている。その力というのものをベートーベンが本当に望んでいた。人々に対するその喜び、(ドイツ語で)フロイデっていう言葉の意味なんじゃないかなと、今すごく思っているんです」としみじみ。

続けて、「まるでベートーベンは今も世界中で起こっている戦争や、コロナで人と人がつながりを失いかけたこととかも、全部予想していたんじゃないかと思うぐらい。今のこの年に、僕ら1万人がそれぞれに練習して、集まって、一つのものを作ろうとしている。これがもう僕には何かもう、偶然そうなったとは思えないです。だからすごくそういう大きなミッションを感じて、単に大阪で行われる“イベントコンサート”ではなくて、ものすごく大きなメッセージを持って、世界に呼び掛けるものだと思って、今回の演奏会を迎えたいと思っています」と力を込める。

田中も「会わなくてもコミュニケーションを取れる手段がいっぱい増えて便利だけど、『会った方がいいよな』っていうのが、僕は根本にある。『1万人の第九』という企画は、みんなで一つのものを作り上げるというすごくすてきなことなので、シンプルに復活してよかったなって思いますし、その復活に生で関わらせていただけるのはうれしいですし、やっぱり会いたいなっていうのが、素直な気持ちですね」と思いを伝えた。

また、佐渡氏は「日本人にとって特別な存在」であるという「第九」について、「ベートーベンが聴力を失いながらも苦悩から喜びの歌を作り上げた背景が、日本人に共感を呼ぶのではないでしょうか。年末に開催されることで『今年1年いろんなことがあったけども、また来年いい年を迎えられるかな』という期待につながるのだと思います。年末に何度か『第九』を指揮しますが、佐渡裕の『第九』を聴くっていうのは、もう初詣に行くみたいな、なんか厄除けみたいなそういうものになってきているかもしれないですね」と言って笑った。

田中は「クラシック音楽を知らないと思っていましたが、実際に聴いてみると『めっちゃ知ってる』と感じることも多い」と明かし、「曲を練習する過程でその深さや楽しさを発見しました。『第九』は100%認知度がある楽曲だと思いますが、佐渡さんがおっしゃった楽曲の奥深さやベートーベンの思いなど、知らないことがあって、そこに参加者の皆さんの思いも乗って、まだワクワクすることがたくさんある。皆さんが『1万人の第九』に懸けてきた思いというものを、本番で受け取ろうと思っていますので、そこからまた印象が変わると思います」と、「第九」のさらなる魅力を感じられることに期待した。

そして、「1万人の第九」の見どころとして、佐渡氏は「大きな会場で1万人という大人数で一つの合唱を作り上げること」の魅力に、あらためて言及。「1万人で第九を演奏するとのはやっぱりほかに例がなく、クオリティーもすごく高い。僕から200m離れた人もいるのに、一つ一つギアがかみ合うように作れていると思います。決してCMで流れる10秒、15秒ぐらいの喜びの歌だけではないので、すごく複雑な部分や、技術が必要な部分もあるのですが、1万人が何百メートルと離れた中で音楽を作っているのに、ここまでできるのかというのが大きな見どころです」とスケールの大きさと、クオリティーの高さが比例していると自信をのぞかせた。

併せて「最後に花火大会みたいにものすごくテンポでエンディングに向かっていくんですが、そこが一番の聴きどころでしょう。『喜びの歌』なんですが、実はベートーベンが、『簡単に喜びは手に入らない』って言っている作品でもあるんです。だからたくさん練習して、一生懸命覚えて、難しい音程をとって、やっと合唱ができるんです。簡単にできるものではないし、だからこそ感動するものがあると思いますね」と、参加者たちの努力の上に成り立っている「一万人の第九」であることに触れた。

田中は「単純にいろんなクラシックっていうか音楽のよさ。音楽っていいな、やっぱりすごいな、深いなと感じると思います。僕みたいにクラシックに対して、縁がない人でも、すごく楽しく見られる時間なので、受け取るものはあると思います」と、気負わずに見られることをアピールした。

© 株式会社東京ニュース通信社