人事制度トレンド 専門性を評価し報酬に連動

■昇格要件改め20代で管理職登用も

今年度下期の人事制度改正も、評価を報酬に連動させるのが特徴的だ。

あいおいニッセイ同和損害保険(東京都渋谷区)は10月からの人事制度改定で、ジョブ型の新たな社員区分として「専門社員」を創設した。データサイエンティストやサイバーセキュリティ人財、弁護士などの領域を対象として、職務内容や必要な専門性などに沿って4区分の職務グレードを設定。高度な専門性に見合った処遇とし、安定的な人財確保に向けて社内登用・経験者採用も行う。


また全域型・広域型・地域型に分けている現行の社員区分を「基幹社員」に統合し、転居可否について社員本人が毎年選択することを可能にする。さらに非管理職層の資格区分を6区分から4区分に大括り化することに加え、資格ごとに定める昇格可能な年次要件を廃止し、20代での管理職登用を制度的に担保する。


医薬品開発支援のイーピーエス(東京都新宿区)も10月1日、人事制度を改定した。社員一人ひとりに役職者の目が行き届くように、組織の最小単位「課」の所属人数の適正化を進めて機動性を向上。同時に評価についても、俊敏性や自律的に挑戦する人材を重視するなど評価基準の最適化にも踏み込んだ。

最も力を入れたのは報酬で、複数年度にわたって高評価を得た社員の業績賞与を20%増額するなど、従前以上に成果に対して公正になるよう改めた。高評価を得た社員が早く昇格・昇給できるように、等級を2段階上げることを認める「飛び級制度」も導入。このほか部長・室長以上に支給する役職手当を月額2~4万円増額するとともに、新卒初任給を一律1万4千円引き上げるなど全社員向けにベースアップも実施している。

パソコンを製造・販売するマウスコンピューター(東京都千代田区)は10月2日、人事制度に新たにコンピテンシーを導入したと発表した。職種・役割ごとにハイパフォーマーに共通する行動特性を設定し、普段意識していることや行動変移などを評価。企業が期待する行動を明確化することで、各従業員の成長や生産性の向上に繋げる。

働き方もフレックスタイム制度や週休3日制、時間単位有給取得制度を導入するなど柔軟化を実現。また従業員の成長を企業全体でバックアップするため、新卒・中途入社社員に一定期間、先輩社員が職務や社内ルールを指導する「バディ制度」も新設した。

治験施設支援のシミックヘルスケア・インスティテュート(東京都港区)は10月から人事制度を改定するとともに、来年から新たな報酬制度への移行を図る。人事制度に関しては、個々が担う役割と発揮価値に応じた処遇を強化。報酬テーブルも改定し、全体で約7%報酬をアップさせる。

酒類販売業のカクヤスグループ(東京都北区)は10月から、等級・賃金・評価制度を見直す人事評価制度の改定を実施した。等級要件を見直し、評価だけでなく育成にも活用。賃金も初任給を含め、平均7%のベースアップを敢行している。

保険薬局運営のクオール(東京都港区)も10月から、新たな人事制度を開始。従前まで薬剤師に限っていた店舗責任者の任命要件を、登録販売者などの資格を保有する職員などへ拡大し、同額の役職手当も支給する。

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