【連載コラム】第40回:2年2400万ドルの契約が正式発表 タイガースで前田健太に求められる役割とは

写真:タイガースと2年契約を結んだ前田健太

日本時間11月29日、デトロイト・タイガースは前田健太投手と2年2400万ドルの契約を結んだことを正式に発表しました。契約の内訳は、2024年の年俸が1400万ドル、2025年の年俸が1000万ドルとなっています。また、球団の発表によると、前田投手は契約期間中、毎年タイガースの基金に寄付をする予定となっており、2024年に7万ドル、2025年に5万ドルと金額も公表されています。要するに、年俸の0.5%を寄付するということになります。

契約条件の詳細はさておき、タイガースはまだ多くの大物投手が移籍市場に残っているこのタイミングで、なぜ前田投手を真っ先に確保しようとしたのでしょうか。スコット・ハリス編成本部長は「我々は先発ローテーションにベテランを加えたかった。ベテランを加えることで、我々が試合に勝つ手助けとなり、若い先発投手たちにもいい影響を与えてくれると考えている」と話しています。

現在、タイガースのロースター40人枠に登録されている投手18人のうち、前田投手を除くと、最年長は1994年生まれのミゲル・ディアス、先発投手に限ると、1995年生まれのアレックス・ファエドとなります。つまり、前田投手を除いて30代の投手が1人もいません。今季、地区首位のツインズから9ゲーム差の2位に終わったタイガースがさらに上を目指すために、若手投手陣のリーダーとなるベテランが必要だと考えたのは自然な流れと言えます。

また、ハリス編成本部長は「ケンタはストライクをしっかり投げられる投手だし、空振りを奪える変化球を複数持っている。優れた競争者であり、素晴らしいチームメイトでもある。ケンタの仕事ぶりを見て、若い先発投手たちにはコマンド、ゾーン全体を使うこと、持ち球を駆使することなどの重要性を学んでほしい。ケンタはキャリアを通して、そうしたことを実践してきた」とも話しています。リーダーというだけでなく、「お手本」としての役割も期待していることがうかがえます。

もちろん、先発ローテーションの一角を担う重要な戦力としても期待されています。トミー・ジョン手術からの復帰1年目となった今季は黒星が先行し、防御率も4点台に終わりましたが、故障者リストから復帰した6月以降の17登板では6勝4敗、防御率3.36をマークしました。

ハリス編成本部長は「特に故障者リストから復帰してからの17試合は素晴らしかった。8月には球速が故障前の水準に戻っていたし、手術明けだったことを考えると、今後に向けての好材料だ」とコメント。「こうしたことを踏まえ、ケンタが我々のチームにフィットすると判断した」と来季以降の活躍を確信したうえで、11月中という早い段階での獲得に動いたというわけです。

また、タイガースとしては、2000年の野茂英雄投手と木田優夫投手以来24年ぶりの日本人選手となります。ハリス編成本部長は「我々がケンタをターゲットにしたのは、とても才能があり、試合に勝つのを手助けしてくれる先発投手だからだ」と語る一方で「このチームを選手がプレーしたい場所として再ブランディングしたいと思っている。ケンタは久しぶりの日本人選手だし、ケンタがここで活躍し、家族も含めて快適に過ごしてくれれば、他の日本人選手もデトロイトでプレーしたいと思ってくれるかもしれない。それは素晴らしいことだ」と別の狙いがあることも明かしています。

投手陣のリーダーとして、若手のお手本として、先発ローテーションの一角として、そしてデトロイトと日本をつなぐ架け橋として。前田投手は様々な役割を担うことになりそうです。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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