「原爆小頭症」兄と妹の絆 放射線の罪映すフィルム、後世に

喜寿のお祝いの会に参加する中井新一さん(中央)とその後ろに座る葉子さん。賀村春彦さん(右)も参加した=9月、広島県

 主に1960年代に「原爆小頭症」被爆者を撮影した菅沼清美さん(76)=横浜市保土ケ谷区=のフィルムが原爆資料館(広島県)に託されるきっかけになったのは、横浜市内で暮らす小頭症被爆者の兄と妹の存在だった。核兵器の非人道性を示す貴重な記録は、同志によって資料館に届けられ、後世まで伝え継がれる道が開けた。

 先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)開幕前日の5月18日。神奈川新聞は、横浜で暮らす小頭症被爆者の中井新一さん(77)と、妹の葉子さん(72)の思いを記事にした。

 新一さんは、広島の爆心地から700メートルにいた母親のおなかの中で原爆放射線を浴びた。両親亡き後、2人で支え合ってきた。知的障害があり、言葉を続けて話すことが難しい兄を「しんちゃん」と呼ぶ妹。新一さんの刺しゅう作品の出来栄えを一緒に喜ぶ、穏やかな生活を過ごしてきた。

 葉子さんは時折「原爆に遭わなかったら」と考えるが、2019年に小頭症被爆者と家族らでつくる「きのこ会」とつながり、仲間の存在に励まされてきた。

 サミットを控えた記事では「戦争があり、核兵器が使われた事実を年に数回でもいいから考え、何かを感じてほしい」と訴えた。

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