[社説]PFOAに発がん性 健康守る規制強化急げ

 世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)が、有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)の一種であるPFOA(ピーフォア)とPFOS(ピーフォス)の発がん性の評価をそれぞれ引き上げた。

 実験や研究に基づき人の発がん性について4段階で評価している。

 今回、PFOAをそれまでの「可能性がある」から2段階引き上げ、最も高い「発がん性がある」と認定した。喫煙やアスベスト(石綿)と同じ分類となる。

 それまで分類していなかったPFOSも新たに下から2番目の「発がん性の可能性がある」に追加した。

 有害化学物質を国際的に規制するストックホルム条約でPFOSは2009年に、PFOAは19年に「廃絶」などの対象になった。

 これを受けて国内ではPFOSが10年、PFOAは21年に製造・輸入が原則禁止された。

 しかし、撥水(はっすい)・撥油剤や界面活性剤として広く使われてきたPFOS・PFOAは現在も工場や産業廃棄物処理場の廃水、古い泡消火剤などから各地で検出されている。

 国内では20年、当時の知見に基づき水質管理の暫定指針値をPFOS・PFOAの合計で1リットル当たり50ナノグラムとした。

 だが米国では今年3月、PFOSとPFOAの基準値をそれぞれ1リットル当たり4ナノグラムとする案が出され、年内にも確定する見込みだ。

 国民の健康に関わる問題であり、日本でも規制の厳格化を急ぐべきだ。

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 県内の水源では全国に比べて高濃度の検出が相次いでいる。

 環境省がまとめた全国調査では20年度、河川・海域・地下水・湧き水143地点のうち、12都府県の21地点で暫定指針値を超えた。そのうち4地点が県内だ。

 県が、北谷浄水場で高濃度のPFOSが検出されたと初めて公表したのは16年だった。

 汚染源は米軍嘉手納基地の可能性が高い。同基地周辺の井戸では昨年も指針値の43倍が検出されている。

 昨年は普天間飛行場に隣接する小学校の土壌からも検出された。

 県内6市町村7地域の387人を対象として市民団体が実施した血中濃度調査では、全ての地域で全国平均を上回る濃度も判明した。

 米軍基地が集中する県内では、長期間にわたり広範囲の汚染が懸念される。

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 一方、県が求める米軍基地内への立ち入り調査は実施されておらず、汚染源はいまだに特定されていない。

 今年6月には返還予定の基地周辺15地点の地下水調査で、国内で使用が禁止されているDDTなど15項目の検出も明らかになった。

 PFOS・PFOAの発がん性が遅れて認定されたことを考えれば、これらの化学物質についても規制の基準を設けるべきだ。

 国と県が共同して継続的に基地内を立ち入り調査できる仕組みをつくるべきだ。

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