「貧困ビジネス」か 困窮者の保護費横領、容疑で県警社長再逮捕

 生活困窮者をアパートに住まわせて生活保護費を着服したとして、県警組織犯罪分析課と相模原北署などは31日、業務上横領の疑いで、相模原市緑区西橋本、不動産会社社長の男(62)=詐欺罪で起訴=を再逮捕した。

 再逮捕容疑は、2014年12月〜15年12月、49〜54歳の男性3人の生活保護費計約123万円を着服して横領した、としている。男は「未収金があったので引き出した」などと容疑を否認している。

 県警によると、3人は以前、男が管理する同市中央区のアパートに居住。男は、3人から通帳や印鑑などを預かって保護費を管理する「金銭管理契約」を結び、退去後も市に差し止めを申告せず、金融機関の口座から引き出していたという。

 男は、相模原と厚木の54部屋に生活保護受給者を住まわせた上で保護費を管理していたとされ、県警は生活保護者を狙った「貧困ビジネス」に関与していたとみて調べている。■「神様だと思った」 「生活保護を受けて楽に暮らせるよ」「俺が福祉事務所に全部説明するから、隣にいればいい」。厚木市内の河川敷で生活していた男性(58)は昨年6月、男から突然声を掛けられた。

 「何だこいつは」と思ったが、「ちゃんと部屋もある」ことに引かれ、言われるがまま金銭管理契約書にサイン、アパートに入居して生活保護受給者となった。だが、月額約4万円の住居費だけでなく、食費などとして支給される約7万円の生活保護費も男に管理された。手元に渡されるのは週5千円だけで、今思えば「ばからしい」生活が半年ほど続いた。

 相模川で2年ほど車上生活していた別の男性(74)は「手持ち金がなくても入居できます」と書かれたチラシを見て男に電話し、1室約20平方メートルのアパートを紹介された。

 「天国だった。神様だと思った」が、当初月5千円だった管理費は約1年後、「たばこを吸うのは契約違反」と2万円を要求された。行き場のない弱者から金をむしり取ろうとする姿勢に「生保受給者を食いものにしている」と憤る。

 事態を重く見た相模原市は2月、▽管理費と共益費の合計が共同住宅の単身世帯で月額5千円を超えない▽要件を満たさない場合などは転居を指導する−などを盛り込んだ指針を作成し、再発防止を図っている。

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