「花郎」BTSのV、「愛の不時着」ヒョンビン、「梨泰院クラス」パク・ソジュン…新たな韓流ブームのきっかけに

2003年、あの「冬のソナタ」がNHK BSで日本初放送されて今年で20年を迎える。「韓流ブーム」と呼ばれた社会現象は様々な時代を経て、今ではひとつのジャンルとして日本のエンタメ市場にしっかり定着している。かつてシニア世代がメインだった韓国ドラマの視聴者層は、ここ日本においてどう広がってきたのか。それは、まぎれもなくブレイクドラマの主人公を演じた俳優の存在が大きい。そこで今回は、各年代の“韓流人気”を牽引してきた俳優たちの変遷を振り返ってみる。


2016年、韓国ドラマ界に大きな当たり年がやってくる。王宮ロマンス「雲が描いた月明り」パク・ボゴムが大ブレイク。史劇ロマンスの“ツンデレ世子”ブームの火付け役に。

同じく時代劇で、見目麗しき皇子たちが大挙出演した「麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜」にハマる人も続出。それまでも根強い人気を誇っていたイ・ジュンギだが、この冷酷な皇子役が受け、新しいファン層を獲得した。一方で、当時新人だったナム・ジュヒョクはこの作品を足がかりに飛躍していく。

さらに、美男集団を主人公にした青春史劇「花郎<ファラン>」では、パク・ソジュン、パク・ヒョンシクらに注目が集まり、スターダムにのし上がっていくきっかけとなった。「雲〜」「麗」「花郎」というイケメン集団×時代劇の成功は、青春時代劇から新世代のスター俳優が生まれる流れを作った。

しかも、「麗」ではEXOのベクヒョン、「花郎」ではSHINeeのミンホBTSのVと、人気K-POPグループのメンバーが出演したことにより、K-POPファンがドラマに、またドラマファンがK-POPに関心を持つといった好影響を双方向に与えることに。その結果、「美男ですね」あたりから来ていた、“アイドル起用”が加速していくわけだ。

また、2017年には「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」が日本でも放送され、コン・ユに沼落ちする視聴者が急増。1979年生まれで当時30代後半だった彼が、ラブストーリー(しかもファンタジーラブコメ)で支持されたことで、キラキラした若手だけでない、韓国のアラフォー世代、実力派俳優にまで関心が集まっていく。

「愛の不時着」ヒョンビン

そして、2020年から始まるコロナ禍により、一挙に動画配信時代に。特に、Netflix独占配信の「愛の不時着」(日本初配信2020年)と「梨泰院クラス」(日本初配信2020年)の爆発的ヒットは、新たな韓流ブームを巻き起こし、ヒョンビン、パク・ソジュンは韓流にまったく興味のなかった一般層も魅了。老若男女が夢中になり、社会現象を巻き起こしたが、その熱気は2003年の第一次韓流ブーム時を思い起こさせたほどだった。

この新たな潮流により、現在、Netflix作品がスターを輩出する大きな鍵になっている。その代表格が、「わかっていても」(日本初配信2021年)などで熱い支持を集め、“Netflixの息子”の異名を得たソン・ガン、王道ラブコメ「社内お見合い」(日本初配信2022年)が世界的ヒットを記録したアン・ヒョソプだろう。彼らはまさに配信時代の申し子だ。

“ネトフリスター”ばかりではない。それまでもそうだが、魅力的なキャラクターと魅力的な俳優が掛け合わさり、ストーリーが優れていれば、時代の潮流に関係なく、スターは生まれるもの。その好例が、「赤い袖先」(日本初放送2022年)でカリスマ王イ・サンを演じたジュノ(2PM)だ。彼はいまや韓国のみならず日本でも高い支持を仰ぐ人気俳優の座を確立している。

この20年で、韓流スターの生まれ方も変わった。以前は韓国放送と日本放送のタイミングのズレがあったが、配信時代の今はほぼ同時にドラマが観られるようになり、現地での熱がそのまま日本に伝わってくるようになった。今後どのようなドラマが生まれ、どのようなスターが出てくるのか、時代の流れとともに見守っていくのも面白い。


TEXT:高橋尚子(編集・ライター)

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