横浜の台湾料理店主がホームレスに提供 「名無しの弁当」に込められた思いとは

「困っている人を助けるのは当たり前のこと」と話す里村さん=横浜市中区の「台湾家庭料理 口福館」

 「野宿をしている人が多く眠る場所で、早朝に目が覚めると、お弁当が置かれていた」。11月上旬、交流サイト(SNS)にそんな書き込みがあり、ふと目に留まった。リプライ(返信)などを追っていくと、横浜市中区伊勢佐木町に店を構える「台湾家庭料理 口福館」にたどり着いた。名無しの“お弁当”に込められた思いとは-。

 日曜日の営業終了まで残り30分となった店内。厨房(ちゅうぼう)で中華鍋を振るっていたのは、店長の里村広志さん(53)。閉店後、一人で自転車に乗って近隣のマリナード地下街と横浜スタジアムに向かうと、できあがったばかりの弁当をホームレスの人たちに配って回った。

 15歳の時に台湾から両親と来日。故郷で通っていた教会では、ホームレスや生活困窮者に食事を届けていたといい、「互いに笑顔になっている姿が心に残っている」と里村さん。母が店を立ち上げてから30年を迎えた昨年、弁当を配布する活動をスタートさせた。

 毎週金曜日にメニューを考え、土曜日に食材を調達。1回に作るのは50個弱で栄養バランスと満腹感を念頭に、週替わりでスタミナ満点のルーロー飯やエビチリ、サラダなどをこしらえる。弁当を届け終えると、時計の針が午前0時を過ぎていることもあるという。

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