[社説]空港・港の軍民両用化 沖縄を何だと思ってる

 内閣府の説明資料には、民生利用との「デュアルユース」が前提とある。

 デュアルユースとは軍民両用という意味だ。あえて横文字の言葉を使っているのは、その日本語の使用を避けたかったからに違いない。

 政府が進めている「特定重要拠点空港・港湾」の整備事業は、平たく言えば、空港・港湾等の軍民両用化を押し進める計画のことである。

 特定重要拠点と位置付ける空港・港湾について、地元自治体の同意を得た上で、自衛隊などの戦闘機や輸送機、輸送艦や護衛艦が使用できるように整備する。

 施設管理者との間で「円滑な利用に関する枠組み」を設け、平時・有事を問わず自衛隊や海上保安庁などが使用できる体制を整える。

 上川陽子外相は国会で、日米地位協定に基づき米軍も利用が認められる、との見解を明らかにした。

 全国9道県32カ所が当面の候補に挙がっているが、主要なターゲットは沖縄だ。

 県内で対象になっているのは与那国、新石垣、波照間、那覇など7空港と石垣、平良、那覇など5港湾施設。

 復帰を前に県と国の間で軍事利用をしないとの覚書が交わされた下地島空港も候補となっている。

 自見英子沖縄担当相は国会で「沖縄振興の趣旨に反することにはならない」と答弁した。

 果たしてそうだろうか。

 沖縄振興本来の目的と相いれないだけでなく、基地の負担軽減にも明らかに逆行する内容だ。

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 空港や港湾は離島県の沖縄にとって、最も重要な生活インフラであり、産業インフラである。

 地元の要望があれば、沖縄振興特別措置法(沖振法)の趣旨に沿って、地域振興の観点から整備を進める。それが本来の姿である。

 「台湾有事」との関連で離島の一部自治体から要望が上がっているシェルター設置についてもそうだ。

 台風で島が長期間孤立したり観光客が行き場を失うなどの非常時に備え、庁舎などの地下を利用して災害時避難施設を整備する。

 国が優先すべきなのは、そのような離島振興である。

 県は、さまざまな疑問が払拭できていないとして「特定重要拠点空港・港湾」整備の来年度予算計上を要望しない考えだ。

 国の沖縄関係予算に整備費が計上された場合、沖振法に基づく沖縄振興は、大きく変質することになる。

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 4月に宮古島沖で自衛隊ヘリが、11月には屋久島沖で米軍のオスプレイが墜落し、多くの犠牲者を出した。

 自衛隊や米軍の民間施設使用が活発になれば、平時の事故の懸念、有事の攻撃対象になる懸念を、同時に抱え込むことになる。

 敵基地攻撃能力(反撃能力)を備えた長射程のミサイルが配備されれば、危険性はいっそう高まる。

 基地の負担軽減が中身のない空疎なかけ声になってしまうことを、なんとしても防がなければならない。

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