サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2023年)~2023年は前年比5.2%増の約9,430億円見込、国内消費者向け(BtoC)サブスクリプションサービス7市場の市場規模~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の消費者向け(BtoC)サブスクリプションサービス市場を調査し、定期宅配系を除く主要7分野(ファッション分野/飲食店サービス・テイクアウト分野/ライフスタイル分野/レジャー・エンタメ分野/情報コンテンツ分野/教育分野/メディカル・ヘルス分野)の主要・注目カテゴリーの市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況
2023年の消費者向け(BtoC)サブスクリプションサービス国内市場規模(7市場計、レンタルサービスを対象とし、定期宅配サービスは除く)は、エンドユーザー(消費者)支払額ベースで前年比5.2%増の9,430億3,000万円を見込む。

サブスクリプションサービス市場はデジタルコンテンツ業界を中心に2010年代中頃から拡大してきたが、近年は衣・食・住など日常生活に欠かせないものを提供する業界でも継続的にサービスを提供する形態が広がっており、プラットフォーム事業者も現れている。この背景から、同市場における多くの分野が成長段階にあり、同市場は伸長している。

2.注目トピック~ライフスタイル分野のうち、家電セグメントの動向~

家電セグメントはコロナ禍を機に急拡大しており、消費者向け(BtoC)サブスクリプションサービス市場全体においても、サービス数が多く活気のあるセグメントである。

コロナ禍前は、家電や家具のサブスクリプションサービスは所有せずにレンタルして利用する対象にはなりづらく、サービスが浸透しづらいと考えられてきた。また、当時は大手家電メーカーの参入も少なかったことから提供できる家電ブランドや種類が限られていたことも市場が成長しない要因となっていた。

コロナ禍以降、人々が外出を控えるようになり店舗での買い物が減ったことで、ECの利用が進んだ。しかし、家電や家具などは店舗で一度実物を見てから購入する消費者が多く、ECでの購入に慎重になる人々が一定数いた。そのような状況で、製品を一定期間使用し、気に入ったら利用し続けることができる家具・家電のサブスクリプションサービスに注目が集まり、利用が進んだ。それにより多くの家電メーカーがサブスクリプションサービスに参入するようになった。

コロナ禍前までは、エシカル消費として「所有ではなく共有」を意識したユーザーによりサービスが利用されていたが、現在では、一定期間以上同一商品をお試し利用し続けたユーザーに最終的な所有権を移行する家電のサブスクリプションサービスが増えていることから、実用性を意識した利用が進んでおり、実際にそのまま購入するユーザーも増えている。また、お試し利用の延長で気に入った商品をそのまま分割購入するためにサブスクリプションサービスを利用するという新たな考え方やユーザー体験が生まれている。

3.将来展望

コロナ禍では外出できない状況が続いたことからECが普及し、サブスクリプションサービス市場についても室内型のサービス利用が増えた。ライフスタイル分野の家電や家具・インテリアのサブスクリプションサービスや、情報コンテンツ分野の動画配信のサブスクリプションサービスなどが好調に推移した。

コロナ禍以降は屋外での活動が増えてくることから、ファッション分野、飲食店サービス・テイクアウト分野、レジャー・エンタメ分野に関するサブスクリプションサービスが伸びると考える。また、直近では物価高騰の影響が様々な商品やサービスにもみられるようになっていることから、サブスクリプションサービスの利用目的が変化し分野ごとに増減が生じる可能性があるとみる。ただし、サブスクリプションサービス自体が成長市場であることから、概して全体市場は今後も堅調に推移すると期待する。

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