AGFが参画するゴミ拾いはただのゴミ拾いにあらず 静岡で繰り広げられる杏林堂・静岡県との三位一体の活動とは?

味の素AGF・杏林堂薬局・静岡県が三位一体となり海岸清掃活動や講演などを通じてエコ活動を推進している。

AGFと杏林堂はファンづくり、静岡県は静岡県民に身近なブランドや売場を通じて海洋プラスチックごみ防止と地球温暖化防止を図っていくのが狙いとみられる。

静岡県では、海洋プラスチックごみ防止について、ごみ削減に必要な従来の3R(リデュース:発生抑制・リユース:再使用・リサイクル:再生利用)にプラスチックごみの発生抑制や海洋流出防止のための3つのR(リフューズ:断る・リターン:店頭回収・リカバー:海の機能回復の清掃)を加えた6R県民活動を2019年5月から展開している。

杏林堂の「ブレンディ」ザリットル売場

この6R県民活動に、AGFと杏林堂は21年から協力。AGFは21年2月に発売開始した1L用のスティック入りパウダー飲料「ブレンディ」ザリットルを活用して6R県民活動に貢献している。

「ブレンディ」ザリットルは、大型ペットボトル(PET)入りのお茶やコーヒーを持ち運ぶのは重たくてストックするにも場所を取ることから、その解決に向け、買いやすさや使い勝手のよさに主眼を置いて開発された。

これに伴いスティックの包材の一部に紙素材を使用するなど、エコ設計も特徴となっている。

また、ペットボトルからザリットルに置き換えて使用した場合、プラスチック使用量が約97%削減でき、輸送効率が大幅に改善されて運搬車のCO2排出削減につながることから行政・流通を巻き込んで協力の輪が広がっている。

静岡県とも連携していたAGFが、取引関係のある杏林堂をつなぎ三位一体の活動が実現した。

「静岡県連携POP」

杏林堂は「ブレンディ」ザリットルが環境に配慮した商品であることに加えて6R県民運動と地球温暖化防止の活動に賛同していることを示す「静岡県連携POP」を活用した売場づくりに取り組んでいる。

店頭以外にも三位一体で活動領域を広げている。

活動にあたりAGF側で杏林堂と静岡県との調整役を担うのが静岡営業所長の藤澤さん。三者で取りまとめられた大枠を受けて、同じ事務所の青木さんが企画立案し実行に移している。

「流通さんでしかできないお取組みと、メーカーだからこそできる取り組みを組み合わせて独自な活動をしていきたい」と青木さんは意欲をのぞかせる。

浜辺でのマイクロプラスチック講義を受けてマイクロプラスチックを拾う様子

直近の活動で最たるものが11月4日に遠州灘海浜公園凧揚げ公園横(静岡県浜松市)で実施した「静岡のキレイな海を守ろう大作戦」となる。

砂丘のゴミ拾いやゴミ分別ゲームに加えて、専門家によるマイクロプラスチックに関する講演も行われた。

マイクロプラスチックは、5mm以下のプラスチックを指し、プラスチックの中でとりわけ海洋中の生態系に及ぼす影響が懸念されている。

具体例としては、海辺に漂着したプラ容器などが紫外線や昼夜の温度差で劣化して破砕されてできたもの以外に、たばこのフィルターやマイクロビーズ、タイヤがすり減ってでき るタイヤ粉塵などが挙げられる。

島田市での高校生向けに開催したSDGsの授業

海を守ろう大作戦について「ゴミ拾いでは45L袋で13袋ほど回収したが、それ以上に参加者に響いたと個人的に思うのが行政の専門家によるマイクロプラスチックの講義。普段、あまり意識しないマイクロプラスチックが、実は海の生態系に非常に害を及ぼしている可能性があることを講義いただき、参加者がエコ意識を強めていただいたものと考えている」との見方を示す。

三位一体の活動を基点に“スピンオフ”も生じている。

静岡県庁のSDGsイベントにAGFが出展したことを契機に、島田商業高校からの要請を受けて、2022年11月10日には、島田市・AGF・杏林堂の3者で島田商業高校の生徒に向けてSDGsをテーマにした講義を行った。

杏林堂小松店(静岡県浜松市)で開催された「夏休みリモート工場見学会」にて 「ブレンディ」スティック飲み比べする小学生

AGFと杏林堂の活動としては、2023年7月30日、小学校4-6年生を対象とした「夏休みリモート工場見学会」を杏林堂小松店(静岡県浜松市)で午前と午後の二部制で各回10組20人を招いて実施。

AGFの主力工場の1つであるAGF鈴鹿の動画の放映や試飲体験など好奇心を刺激する内容を織り交ぜてエコやSDGsの理解促進を図った。

動画については「会社に既成の動画が無く、どうせやるならお子様にも分かりやすい内容にしようと考え新たに製作した。フリーズドライ製法の紹介動画や製造ラインを走る商品目線の動画などを用意した」。

試飲体験は、「ブレンディ」スティックの「カフェオレ」「キャラメルカフェオレ」「紅茶オレ」「ココア・オレ」「抹茶オレ」の5品を飲み比べるようにして実施。人気投票も行ったところ「キャラメルカフェオレ」が1位となり、人気投票の結果は杏林堂小松店の売場で一定期間掲示された。

「ブレンディ」スティックで展開しているメッセージ付きスティックを手本に、メッセージを考案する時間も設けたところ「“子どもが寝たらブレンディタイム”など数々の面白いメッセージが編み出された」という。

取材に応じた藤沢さんと青木さん

このような社会活動を通じた取り組みが奏功してか、杏林堂での「ブレンディ」ザリットルの売上は右肩上がりで推移。

「『ブレンディ』ザリットルは店頭でSDGsが訴求しやすい商品としてご好評をいただき、導入店舗数は前期比で2倍に拡大した。大型店中心だったところから中型店にも採用されるようになったのが大きかった。回転(1店舗あたりの売上)も夏場の猛暑が後押しして好調となっている」と説明する。

杏林堂での配荷拡大余地はまだまだあるという。

藤澤さんは今後の杏林堂との活動について「現在イベントを実施している浜松エリアから、今後は活動エリアを中部や東部などに広げて、より多くの静岡県民の皆様に貢献し、AGFファンを増やしていきたい」との考えを明らかにする。

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