河野デジタル相「紙の保険証求められたら連絡を」保険医療団体反発の声

 河野デジタル大臣が22日の閣議後記者会見で、マイナンバーカードと保険証機能が一体化した「マイナ保険証」の使用を事実上義務化する政策に関し「医療機関から紙の保険証を求められたら国に連絡してほしい」と呼びかけた。マイナ保険証の読み取りトラブルなどがまだ解消されておらず、現在まだ移行措置として紙の保険証使用が認められているにも関わらず、医療機関を悪者にするかのような発言に保険医療団体からは反発が出ている。

マイナ保険証の利用率減少で焦りか

 マイナンバーカードと保険証の機能を一体化した「マイナ保険証」をめぐっては、利用率促進のため、紙の保険証の発行を来年12月2日以降認めないことをすでに政府方針として決定している。医療機関には読み取りに必要なカードリーダーの導入を義務化し一部導入費の補助も行っているが、読み取りトラブルがいまだ解消されず、対応している医療機関でも結局いったん紙の保険証で対応することも続いている。また、一体化するとマイナポイント付与を行う政府の促進策が終了後、マイナ保険証の利用率が下がり続けており、今年10月の時点では約4.5%まで下落した。

 こうした状況のなかで、22日の閣議後会見に応じた河野デジタル相は「マイナ保険証で受け付けることが義務化されているので、もし紙の保険証を求められた場合にはマイナンバー総合フリーダイヤルに連絡してほしい。厚生労働省に情報提供して事実関係を確認する」と発言した。

 真意は不明だが、まるで「マイナ保険証を使わなければ『悪』である」と言わんばかりの発言で、現場でトラブル対応に追われている医療機関にとっては理解し難い発言だろう。実際、会見での発言を聞いた全国保険団体連合会(保団連)の関係者は「不当な行為のように通報を求めるのは断じて許せない」とメディアに話している。

(以上保団連の報道発表資料より)

  なおこの団体がまとめている最新の調査(12月20日発表)では、調査に回答した全国6,000あまりの医療機関のうち、マイナ保険証読み取りに関するトラブルを経験したのは全体の58.4%で、読み取っても被保険者番号がない、無効と表示される、単純にエラーが出るといったトラブルが多発していることが明らかになっている。こうしたトラブルの場合、保険証の情報が分からないので、現実として紙の保険証を改めて提示してもらうか、いったん10割の全額自費で診療を行うしかない。現場ではそうした対応を行うしかない事例が頻発しているにも関わらず、それが悪意だと決め付けるかのような発言は普及へのモチベーションを下げる効果しかなく、どのような意図で発言したのか、今後説明が求められる。

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