千葉県で続々導入 EV省エネ充電の技術が脱炭素のカギ「EVロータリー」に迫る

千葉県で続々導入 EV省エネ充電の技術が脱炭素のカギ「EVロータリー」に迫る

 近年、地球温暖化対策としての環境問題が世界的な関心事となっている背景から、温室効果ガス排出量が少ない電気自動車(EV)への需要が急速に高まっています。そして、この需要増加に伴い、充電設備の整備が新たな課題として浮上しています。

 この課題に対応するために、船橋総行(本社:千葉県船橋市高瀬町62番2号)はEVロータリーシステムを開発しました。このシステムは、電力会社からの供給電力を効率的に複数のEVに分配することで、既存の電力設備を最大限に活用する仕組みとなっています。

 今回、船橋総行の二宮 正 代表取締役に、EVロータリーシステムと、その特徴について伺いました。

船橋総行本社外観。入口近くにEVロータリーMINIが設置されている

 EVロータリーは、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)の充電を低コストで行うシステム。これは複数台駐車がある集合住宅や定期契約の駐車場などに適しており、タイマーを利用した切替スイッチで電力を効率的に複数のグループに振り分けます。これにより、電力会社からの供給量を増やすことなく、複数台のEVへの充電が可能になります。

EVロータリーの仕組み

 EVロータリーは社有車や公用車に特に適しており、多数の車両の分散充電のしやすさもさることながら、急速充電によるバッテリーへの負荷を考慮し、低速充電を基本とするため、バッテリー寿命を延ばす効果があるということです。
 これは、頻繁な使用が求められる公用車や社有車にとって大きなメリットになります。さらに、充電のために車を移動させる必要もなく、電力料金のみの課金方式は、追加の支払いシステムやアプリを必要とせず、複数台のEV車両運用を行う組織にとっては、導入、運用コスト削減に期待できるということです。

船橋総行 二宮 正代表取締役
「自治体や企業は契約電力量は変えたくない、変えられないという事情がある、EVロータリーであれば1台分の電力量で3台分を賄うことができる。EV導入により電気の基本契約こそ高くついてしまうところの解決策として、このシステムは適していると思う」

船橋総行 二宮正 代表取締役

 そんなEVロータリーは約10年の構想の末、2017年に特許化。 検証期間を経て事業化を遂げました。そのアイデアの新規性や独自性から2021年に船橋市ものづくりグランプリに選ばれ、同年11月には「千葉県ものづくり認定製品」として認定されました。特許も国内のみならずインドやベトナム、オーストラリアの特許も取得していて、特許に関わるアイデアがどんどんでてくると二宮氏は語ります。

船橋総行 二宮 正代表取締役
「電源も3系統のバックアップがあれば良いなというところから着想に至った。その他にもアイデアがいくつかある。考えるのが楽しい」

自治体施設へのEVロータリー設置の様子。印旛合同庁舎(佐倉市)写真上と山武健康福祉センター(東金市)写真下

 2021年12月、EVロータリーシステムは千葉県の自治体としては初めて流山市役所に導入、2023年11月には印旛合同庁舎(佐倉市)と山武健康福祉センター(東金市)に導入されました。
千葉県は2030年度までに公用車全体を電動車とする目標を掲げていて、EVロータリーの導入は、この目標達成への足掛かりとなるため自治体も積極的だということです。

 導入に関わった千葉県の担当者に話を伺いました。

千葉県庁温暖化対策推進課 松本 直也さん
「EVを複数台数導入する庁舎においては、台数分の充電器を設置する必要があります。しかし、このEVロータリーMINIを活用すると、電源(ブレーカ)の増強工事を行わずに、1個の電源(ブレーカ)から3台のEVに順番に充電することが可能となり、電力需要を平準化できることから、導入に至りました」
「EVロータリーMINIを設置したことで、電源の増強工事を行わずに、公用車として複数台のEVを導入することができました。また、電気料金などのランニングコストも抑えらていることを実感できています」
「今回設置したEVロータリーMINIなど、様々なタイプの充電器が県内市町村及び事業者に普及することで、脱炭素化に寄与することを期待しています」

船橋総行本社で充電のデモをした様子

 最後に二宮正氏にEVロータリーの今後の狙いを伺いました。

船橋総行 二宮 正代表取締役
「千葉県発のこのシステムを県内外に広げ、EVの普及と共に、経済的かつ環境に優しいサービスを実現し、脱炭素社会の実現に貢献したい」

 船橋総行のEVロータリーシステムが、今後さらに多くの施設や地域で導入され、環境に優しい社会の実現に貢献することが期待されています。

© 千葉テレビ放送株式会社