【令和元年=ライブ元年!?】日本最高峰バス釣りトーナメントの戦績にみる『ライブスコープ』の台頭

時代と共にイクイップメントは進化する。例えば通信機器は固定から移動電話、ガラケーからスマホへと変遷してきたように、バスフィッシングでもこの30年ほどで数々の進化を遂げてきたことはご存知だろう。古くはGPSが山立ての精度を高めたことに始まり、シャローウォーターアンカーや全自動電子アンカーが自船位置をキープして効率化を図り、リチウムイオンがバッテリー重量の劇的な軽量化を果たしてきたという経緯がある。中でも近年、最大の注目機器が『FFS』と呼ばれる文明の利器。登場からわずか5年で、世界バスフィッシングシーンの進化を一気に加速させてきた。ここでは国内最高峰JBトップ50の歴戦を振り返ると共に日本トーナメントシーンのFFS近代史を追ってみたい。

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●文:ルアマガプラス編集部

バスフィッシングの進化を加速させる”FFS”

― 元祖は今から6年前 バス革命の夜が明ける

現代のトーナメントシーンに欠かせない文明の利器『FFS』(=フォワード・フェイシング・ソナー)。従来、垂直方向の水中を見る道具として機能した魚探が『前方』を見る魚探へと進化。現代では各メーカーからほぼ同等の機能を備えるモデルがリリースされるが、先駆けとなったGARMIN社の『ライブスコープ』という名称がその代名詞として広く知られている。ブレーデッドスイムジグが今なおチャターと呼ばれているのと同様の現象だ。

ライブスコープは登場からわずかな期間で一気に隆盛を遂げた。今や国内最高峰トーナメント・J Bトップ50のみならず、各カテゴリーのプロ戦はもちろん、全国各地、在野のローカルトーナメンターにも広く波及していることは周知の通り。

なぜ急速に普及したのか。それはもはや言うまでもなく『釣るための武器』となるからだ。ライブスコープの機能やアドバンテージに関しては別企画で詳細をご覧いただくとして、ここでは主にトップ50を始めとした国内トーナメントにおいてライブスコープがキーとなった名試合の歴史を追っていきたい。

ライブスコープが国内で発売されたのは2018年夏のこと。わずか5年前だが、実はその最新鋭機器が登場する直前、前身となるモデルが存在していたことを知る人は少ないのではないだろうか。

それが『GARMIN PS31』。このモデルをいち早く導入していたのが、現在屈指のライブスコープ使いとして知られる佐々一真選手。国内GARMINスポンサード第1号、いわば“Mr.ガーミン”。当企画の各項では当初から現代まで続く、ライブスコープ進化の歴史を最も深く知る本人に解説をお願いすることにした。

― GARMIN PS31

現代の隆盛へと繋げたFFS革命の元祖機器「当時のモデルは現行のライブスコープほど映像に鮮明さはなく、地形等を確認する方が優先された」と佐々選手は当時を語る。だが、試合最終日に「ヘラの群れが来た」と発言するなど魚影を確認できていたのも事実だ。

全てのアングラーをスキルUP 貴方はFFSを乗りこなせるか?

― またバスフィッシングは進化を加速し続けていく

従来、バスフィッシングは経験値と心身が共に充実期を迎える30代中盤がピークパフォーマンスと語られてきた。ところが近年、その構図が揺るぎ始めている。国内では青木唯選手を筆頭に、今や世界で活躍する藤田京弥選手など20代がトーナメント界の主役となりつつある。それは紛れもない事実だ。

この現象は国内のみに留まらない。米国でもそれは実に顕著。今季のB.A.S.S.マスター2部リーグとも言えるオープンでは、上位を20代の強豪選手が独占。最年少では何と18歳というティーンエイジャーも含まれているという。

誤解を恐れずに言うならば、数年前の上位陣はもはや過去の人。積み上げて来た経験値は足かせとなり、眼の前に見える画面がすべての正解へと繋ぐキーとなっているとも考えられる。また逆も真なり。その画面を得たことで年長者でも新たなるフェーズを迎えることができる可能性を秘めている。

時代の進化はさらに加速する。またFFS自体もスペックアップを果たし、アングラーの武器として今後もさらなる強い味方となることは容易に推測できる。

ただひとつ断言しておきたいことがある。高性能マシンは乗りこなす者=パイロットを選ぶ、ということだ。

世界最速のF1マシンがそこにあっても、ペーパードライバーが記録を生み出すことは不可能。自らが考える前に身体が動き、すべての瞬間をマシンと一体化できるか否か。その能力が問われるのだ。

バスフィッシングの進化が止まることはない。貴方は時代を乗りこなせるか。

平成29年 2017

― 第1戦・遠賀川・4/7〜4/9

準優勝 佐々一真=Mr.ガーミン

ライブスコープ前身『PS31』で魅せた大会最重量の圧倒的スコア!

17開幕戦の舞台はまだ冬の様相だった遠賀川。この試合で優勝を果たしたのは市村直之選手で3日間の総重量は6180g。1本を獲るのも困難なロースコア戦だったが、この2日目に気を吐いたのが佐々一真選手だった。PS31の活用で「ストラクチャーに当てた瞬間に食う」ことを確認。上画像のBIGFISH賞2294gを始め、3本4855g。FFS時代の幕開けを印象付けた一戦となった。

佐々選手自身もPS31を使い始めて間もない時代。
「画面で水中を見ながら確実に食わせることができる。それを確信したのが2日目」
タフ極まる最終日は本誌が同船。価値ある1本を仕留めた瞬間がこの画像だ。

平成30年 2018

― トップ50第4戦・桧原湖・9/7〜9/9

第4位 早野剛史

この夏、ライブスコープが日本上陸! 秋の桧原湖戦で数人の選手が導入へ

「夏に手に入れて、試合前のオフリミット期間中は、同じくスモールマウスレイクの長野・野尻湖で猛練習しましたね」と当時を振り返るのは早野選手。この試合は最終日終了間際にシャローの巻きで大型2本を追加した西川慧選手の優勝となったが、ひときわ大きな話題を集めたのが第4位の早野選手だった。「どのタイミングでフィーディングするのかがわかる」「立木の真上に乗ると魚が逃げる。だから離れてのアプローチ」など、衝撃の表彰台コメントは全選手を震撼させた。

早野選手は同年の初戦・野村ダムでは優勝を果たしている。しかし「まだこの頃はライブスコープを積んでいません。PS31? おそらく佐々だけだったと思います」。カバー撃ちを主軸に、自身初優勝となった18開幕戦だった。

― 第3戦・七色ダム・7/6〜7/8

優勝 藤田京弥

画像を見てもわかる通り、彗星の如く現れたトップ50ルーキーの初年度優勝はサイトフィッシングが主軸。フロントにはGPSを兼ねた魚探が1台のみ搭載されているのもわかる。

― SASSA’s EYE Mr.ガーミン

「当初は喰わせるというより魚の様子を伺うツールの印象」

今でこそ、ターゲットとするバス、そしてルアーまでをも映し出し、如何に喰わせるかという段階へと突入したライブスコープ。だが当初は一般的に、ややもすれば水中カメラの代用的存在として捉えられていたのも事実。「早野さんの『魚が逃げる』発言が印象深い人も多いかと思います」とはMr.ガーミン談。

平成31年/令和元年 2019

― ライブスコープ元年

― トップ50第1戦 七色ダムが転換期 前年に触発された過半数の選手が導入へ

前年の第4戦桧原湖で衝撃を受けた選手の多くはライブスコープ導入を決意。続く第5戦霞ヶ浦でも搭載艇を見かけたが『ライブスコープ元年』と呼べるほどに導入率が高まったのが翌2019年だった。優勝三原直之、準優勝山岡計文の両選手は眼力のサイトフィッシングを主軸とした戦略だったが、続く3位にはライブスコープ組の黒田健史選手がランクイン。後日のインタビューで「過半数が導入済み」との情報を聞く。黒田選手による当時のブログには『決勝進出30名中16名が導入済み』との記述も確認できる。

― 第1戦・七色ダム・4/5〜4/7

第3位 黒田健史

DAY2及び決勝戦で奏功したのがブルフラットのテキサスリグ。立ち木を撃つ前に照射して「ベイトフィッシュやバスが見えれば高確率」とは当時のコメント。日を追う毎にスコアを上げることで定評の黒田選手を後押しする武器か。

― 第5戦・桧原湖・10/11

優勝 藤木淳

台風19号の接近により、異例の1DAY戦となった19桧原湖戦。優勝は結果的にトップ50引退試合にして初優勝となった藤木淳選手。ライブスコープ振動子がエレキシャフトとの連動ではなく、単独で機能するローテーターを搭載していた。

― SASSA’s EYE Mr.ガーミン

「魚が映らない=いない? フィールドに寄りますね」

ライブスコープに映らなければ、そこに魚はいないと判断すべきかとの問いにMr.ガーミンかく語りき。「場所にも寄ります。藻がある、複雑な岩があるなど、魚の隠れ場所があれば映らないことも多い。どんな場所でもルアーを投げてから、魚の有無を判断したほうがいいと思います」タイトにつく魚も映りづらく、ルアーを投入することで動く魚もいるという。

令和2年 2020

― マスターズ第3戦・河口湖・8/8〜8/9

準優勝 青木 唯

コロナ禍・トップ50非開催年の裏で、2部リーグ・マスターズ等で熟成へ

最高峰トップ50はこの年、幾度もの開催延期を経ながら結果的に全試合が非開催へ。仮にこの年も開催されていればライブスコープの進化はさらに加速していたことが推測される。その裏で大いに注目されたのが、JB2部リーグのマスターズ戦。プロ昇格初年度ながら第3戦準優勝を始め、河口湖戦で圧倒的な高打率を誇る青木 唯選手の活躍が話題に。この年に年間15位を獲得して翌年からのトップ50参戦権の獲得へ。そのキーは言うまでもなくライブスコープ。魚探で魚自体を狙う“(ライブ)シューティング” “コールアップ”なる言葉も2000年代以来、久々に聞かれるようになっていった。

― パースペクティブモード 横方向の新機能が登場

この年、前方の縦方向135度が見えるライブスコープに加え、専用マウントで振動子の方向を変えるだけで水平方向150度が見える『パースペクティブモード』発表。もはや水中が丸見えの時代となったのが2020年だ。

― SASSA’s EYE Mr.ガーミン

ライブシューティングとは? 「魚探の画面上でのサイト。目で見て釣るのと同じです」

かつてはストラクチャーの真上を通り過ぎ、魚の居場所を判断して後方へとルアーを投入する方法だったシューティング。現在は前方向をライブで確認できるため、より精度が高まった。
「ホバストでの食わせが現代の主流。例えばベイトの群れがいるなら、やや上など離した場所で誘う。使うルアーが小さいので、群れと同化させず目立たせることも大切です。食ったら即アワセ。サイトと同じですね」

佐々選手が釣った魚はほぼ全て上アゴにフッキング。ヴィローラマイクロから30cmほど離れた位置には極小スイベルを組み、画面上では2点を追って位置を確認している。
本誌2023年11月号の巻頭でお届けした野尻湖釣行では、マイクロホバストを駆使して、ワカサギの群れに着くスモールマウスを爆釣。その模様はルアマガプライム及びYouTubeルアマガチャンネルで視聴が可能だ。

令和3年 2021

― 第4戦・桧原湖・9/17〜9/19

優勝 藤田京弥

京弥・佐々・青木の富士五湖勢が“ライブシューティング”で圧倒

第4戦桧原湖の前週末9/11〜9/12には、マスターズ最終戦野尻湖が開催。優勝は青木唯、3位には藤田京弥が顔を連ね、いずれも翌週への温存のため釣り方は非公表。彼らにとってボーナスステージとさえ囁かれた桧原湖戦の際、準優勝の佐々選手も含め表彰台上で明らかになったのがライブシューティングだった。3位江口俊介、5位小森嗣彦選手もライブスコープを積んでいたが流派は異なっていた。キーパー30cm以上かつ激しい個体差が生まれにくい桧原湖戦は通常、上位と下位のスコア差の開きが狭いがこの試合は格差を生んだ印象が強い。また12Vで稼働するライブスコープを24Vに接続して鮮明度を上げる術も明らかに。

― 第1戦・遠賀川・4/3〜4/5

優勝 武田栄喜

前回19年は“遠賀川の神”沢村幸弘選手が圧倒的スコアで優勝の一方で、ライブスコープ活用も準優勝で涙を呑んだ武田選手がついに初優勝。産卵に向けてシャローへ上る個体をパースペクティブとの二刀流で一閃した。

― 第3戦・霞ヶ浦水系・7/2〜7/4

優勝 佐々一真

“Mr.ガーミン”のトップ50初優勝は、奇しくもライブスコープが通用しないと囁かれる霞ヶ浦戦。だが、最終日の本誌同船時は次なるエリアへ到着するや、ベイトフィッシュの濃さや動きを伺うシーンも。バス単体を見るだけがライブスコープのアドバンテージではないのだ。

― 第2戦・弥栄湖・11/1〜11/3

優勝 青木 唯

6月開催予定の第2戦ながら渇水の影響で事実上の最終戦へと延期された弥栄湖戦。精度の高さで定評のライブシューター・青木 唯選手がルーキーイヤー初優勝へ。18京弥選手の記録を2ヶ月凌ぐ、22歳1ヶ月での最年少優勝を決めた。

― SASSA’s EYE Mr.ガーミン

「当て続けると釣れない? そんな経験はないですが…」

ライブスコープに限らず、魚探の振動子が発する超音波は魚に違和感を与えるとされ、特にシャローウォーターでは電源OFFにする派も少なくない。「いても釣れないのは(魚の)その場への依存度次第かと。僕は基本的にONのままです」試合が終盤になると超音波でタフるとも言われますが。「それは釣り方が魚に飽きられていると考え、次なる釣りを模索した方がいいかと」賢人かく語りき。

令和4年 2022

― 第2戦・弥栄ダム・6/3〜6/5

優勝 黒田健史

予選11位、首位との差5kg超をマクったトップ50史上最大逆転記録!

上流組が連日ハイスコアを持ち込み、やや出遅れた感のある本湖下流組の一人だったのが黒田健史選手。予選11位で決勝進出も首位の差は5kg超。通常であれば逆転の望みは薄い。ところが最終日、運命的な天候急変が訪れた。タフな上流に対してプレッシャーの低い下流で、精度をさらに高めたライブスコープの釣りを駆使。ラストは「画面上で食うのがわかった」2500g。大逆転劇を演出!

― 第1戦・遠賀川・4/1〜4/3

優勝 藤田京弥

米国B.A.S.S.オープン参戦の都合上、全戦直前プラのみで参戦となったこの年。初日に遠賀川史上最大記録となる2604gを含む、単日最高記録の7050gは圧巻。多くの選手が見逃す小さな障害物を丹念に撃つ超高精度は、異次元の釣りとも称された。

― 第5戦・桧原湖・10/14~10/16

優勝 梶原智寛

初日はサイトでのヒバラージを主軸に、桧原湖単日記録となる6560g。2日目以降はスモールマウスへと狙いを定め、堅調なスコアを持続。愛艇のトラブルで使用艇は日替わりとなったが、最終日はライブスコープもキーに。

令和5年 2023

― 第2戦・小野湖・6/2~6/4

準優勝 佐々一真

優勝 青木 唯

50選手中、上位2選手のみが頭1つリード 格差を広げた“ライブスコープ使い”

21年ぶりの最高峰戦開催となった小野湖は、個体の大型化が進む一方で異例のタフさを極めていた。多くの選手が1本を仕留めることに心血を注ぐ中、初日に共に6kg台で圧倒的リードを広げたのが佐々一真と青木唯の両選手だった。この日は3位以降で3kg台、2日目は共に4kg超を持ち込み3位以降は2kg台と、上位2選手と下位選手の格差が広がる。そして運命の最終日、わずか124g差で青木選手が勝利へ。

― 第4戦・桧原湖・9/8〜9/10

優勝 藤田夏輝

表彰台上の全選手がライブスコープの使用を明言。とりわけ注目は優勝藤田と準優勝五十嵐誠の両選手。最終日は「大型の通り道を探して待ちの釣り」で、桧原大橋周辺での一騎打ち。五十嵐選手が大会最高重量も、藤田選手が逃げ切り優勝へ。3位青木選手の釣りも注目された。

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