創業60年の食堂「芭蕉」が閉店 胃袋ささえた具だくさんのみそ汁 那覇市・泉崎

28日に閉店した「芭蕉」。店先には女性店主が好きな芭蕉が植えてある=28日、那覇市泉崎

 那覇市泉崎で60年余り営業を続けてきた老舗の食堂「芭蕉」が28日、閉店した。県警本部と開南小学校の間を通る一方通行沿いにある同店の創業は、女性店主(84)によると1961年ごろ。開店間もない頃は駄菓子屋だったが、県庁職員から「食堂をやったら」と勧められ、食堂兼弁当屋を始めた。いなりずしに始まり、具だくさんのみそ汁、シイタケのだしがきいた五目ご飯は瞬く間に人気メニューに。連日、常連客らが詰めかけた店は惜しまれながら幕が下ろされた。(社会部・城間陽介)

 芭蕉はランチだけの営業。最終日の28日、なじみの味を食べ納めしようと、大勢の客が足を運んだ。20代の頃から店に通っている玉城信子さん(74)は「ここのみそ汁は具だくさんで栄養満点。地域の健康を支えてくれた」と感謝した。

 午前9時台に職場を抜けてきた那覇市職員の久手堅憲明さん(32)は、いつものハンバーグ弁当を購入。「上司の分含めて五つ。閉店は残念で寂しい」と別れを惜しんだ。

 最後の営業を終えた女性店主は「県庁、県警、那覇市職員をはじめ、たくさんのお客さんから『お疲れさま』と声をかけてもらえた」と感慨深げ。「地域にこれだけ必要とされていたんだと感じた。幸せです」と、目に涙をためながら店じまいした。

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