【箱根駅伝】選手先導の白バイに駐車場提供…「携われるのは貴重なこと」 横浜・戸塚の和食店、隊員見守り50年余

鈴木房夫さんの遺影を持つ(左から)次女の百武佐知子さんと妻の小夜子さん=横浜市戸塚区

 来年1月2、3日の東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は多くの人の協力なくして、第100回大会を迎えられなかった。ほとんどが県内を通過するコースで、選手を先導する県警交通機動隊の白バイ引き継ぎ場所として、駐車場を半世紀以上にわたり提供してきた飲食店「和食まるぶん」(横浜市戸塚区影取町)もその一つ。亡き店主鈴木房夫さんの思いを継ぐ、妻の小夜子さん(78)は「何でも買える時代に、やりたいと言ってもかなわないことに携われているのは貴重なこと。『主人』を思い出す一日にもなります」と思わず顔がほころんだ。

 国道1号を横浜方面から藤沢に向け車を走らせると、「和定食 まるぶん」の看板が見えてくる。かつては午前7時から午後11時まで営業し、長距離トラックの運転手を相手に安くてうまい定食を提供してきた。

 「昔はうちのような定食屋が何軒もあって、本当にトラック食堂とも言えましたよ」と小夜子さん。約250坪を誇る駐車場は、その名残という。

 小夜子さんが嫁いだ1971年にはすでに、往路の川崎─戸塚で先導する第1交通機動隊と、戸塚─芦ノ湖を担当する第2交通機動隊の白バイなどの引き継ぎ場所になっていたという。

 「お盆と年末年始しか休みがない時代に、子どもの頃は正直、箱根駅伝や父のことが嫌だなと思った時もありましたね」。次女の百武佐知子さん(49)は懐かしそうに振り返る。

 拓殖大出身の房夫さんは箱根駅伝をこよなく愛し、普段から箱根駅伝のマークが入ったジャンパーを着て買い出しに行くような人だった。房夫さんは駐車場以外にも、箱根駅伝のために何か協力したいと県警に申し入れていた逸話が親族間で語り草となっている。

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