[社説]真冬の避難3万人超 教訓生かし命を守ろう

 最大震度7を観測した能登半島地震は、日を追うごとに被害の深刻さが浮かび上がっている。

 発生から5日目。石川県によると死者は94人、安否不明者は222人になっている。救助通報の内容などから、倒壊した建物の下敷きになっているとの情報が100件ほどに上り、被害はさらに拡大する恐れがある。

 家屋の残骸が散乱する現場では懸命な捜索・救助活動が続いているが、度重なる余震で作業は難航している。一人でも多くの人が助かるように全力を挙げてほしい。

 加えて重要なのは、助かった人たちの命を守り抜くことだ。石川県内では5日時点で、約370カ所に3万人以上が避難している。厳しい冬の寒さに耐えながら避難所で過ごす被災者の健康が懸念される。

 避難所のトイレの衛生面の問題もある。流す水が不足し、仮設トイレの設置も遅れている。感染症のリスクや、トイレを我慢して水分を取らずに脱水症状を引き起こす健康被害も心配だ。

 車中泊を続けている人もいる。狭い車内で同じ姿勢でいるのはエコノミークラス症候群の危険性がある。

 避難生活が長引けば、過労やストレスによる「災害関連死」が増えかねない。東日本大震災では3700人以上が、熊本地震では犠牲者276人の8割に当たる221人が関連死だった。

 いずれも対応次第で助けられたはずの命だ。過去の教訓を今こそ生かさなければならない。

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 土砂崩れで寸断されている国道があるなど、物資搬送の状況も正常化にはまだ遠い。

 石川県内の集落では700人以上が孤立状態になっており、甚大な被害となった輪島市では孤立している14地区分の人数が集計できていない。

 被災者の元へ一刻も早く支援を届けることが課題だ。

 目詰まりなく、被災地に必要な支援を届けるため、国、自治体、建設や運輸業界など関係機関が連携し、空路や海路での輸送などあらゆる手段を尽くしてほしい。

 政府は要請を待たずに物資を送る「プッシュ型」の支援を強調している。2023年度の予備費から47億4千万円を支出すると表明し、9日の閣議で正式に決定する見通しとなっている。

 避難は長期化しそうだ。

 仮設住宅の建設やインフラの復旧など、被災者目線に立った必要な支援について、与野党が連携して迅速に進めなければならない。

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 沖縄から何ができるか。

 災害の混乱が続く今は被災地の状況に関心を持ち、寄付やニーズに合わせた物資を送る支援が求められる。

 災害ボランティアについては、自治体の要請に応じて対応することになる。

 石川県の馳浩知事は、能登地域から住民を避難させることを検討しているという。

 沖縄では、東日本大震災の被災者を県が公営住宅などで受け入れた経験もある。

 避難者が暖かい沖縄でゆっくり休めるために、受け入れ態勢を整えておきたい。

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