芸歴24年目「山形県住みます芸人」ソラシド・本坊 ダウンタウンに憧れた男がたどりついた理想の笑いとは

2018年から「よしもと住みます芸人」として山形県に移住して活動する、お笑いコンビ・ソラシドの本坊元児(45)がこのほど、よろず~ニュースのインタビューに応じた。現在公開中の主演映画「脱・東京芸人」をはじめ、山形県での日々、芸人仲間との交流などについて語った。

映画「脱・東京芸人」は、コロナ禍で仕事がゼロになった3年間、自給自足の生活をしようと始めた農業とお笑いに向き合う日々を描いたドキュメンタリー。最初はYouTubeで配信するにあたり、芸人として目立つためには何かしなければと、当時上映中だった「ジョーカー」のメイクで畑に立つと近所から不審がられた。

山形県を中心に活動するソラシド・本坊元児(提供・吉本興業)

町内の自治会長に呼び出されて事情を説明して、「どこまでやれるか分からないけど、やってみたら」と理解を得た。大根700本を植えるなど懸命に汗を流す日々。徐々に周囲の農家からも声をかけられるようになり、自然と交流も生まれた。

デビューして大阪で10年、東京で8年と活動しても全く芽が出なかったが、当時の芸人仲間との交流は続いている。映画のタイトルの題字を描いた麒麟・川島明は、NSCの同期で親友だ。「NSCの頃からウマが合ったんですよ。体形が似ているからと、いまだに服を送ってくれますね。こっちも野菜を送ったりとか」。お互いに仕事の話はしないという。「川島は野暮なことは絶対言わないので。あれどうやった?とか、泣き言とかは言わないですね」。居心地の良い関係のようだ。

ソラシド・本坊元児

先輩からも多くのアドバイスを得た。若手の頃、笑い飯の西田幸治には舞台での立ち振る舞いで厳しく言われたこともあったが、テレビのバラエティーに出演することになり相談すると親身になってくれた。「緊張しますと言ったら、『お前がなんで緊張することあんねん。今までゼロやったもんが、もうマイナスはないんやから。滑ったらレギュラー陣のせいにせえや。俺は出るとき、そう思っている』と、その心持ちの強さは、もうすごい」と目からうろこが落ちた。

「本当、そうやと思えるようになって。西田さんの存在はでかかったですよね」。今回の映画の上映会ではトークショーのゲストとして出演してもらい、優しい先輩に感謝する。同じ時期にメッセンジャーの黒田有にもよく説教を食らった。「嫌やなあ、あの人と思っていたんですけど、自分が背伸びをしていたので鼻をポキッと折ろうとしていたんでしょうね。当時は本質が見えなかったし、今考えると、そういうことなんです」と愛のムチが身に染みている。最近も黒田のYouTube番組に呼ばれ、可愛がってもらっている。

山形県を中心に活動するソラシド・本坊元児(中央)=提供・吉本興業

現在はテレビのレギュラー番組だけでも地元の民放局、ケーブルテレビ、BSと合わせて計6本。移住してからはお笑いに対する意識も変化が生まれた。「周りから見たら変わっていないって言われるかもしれないけど、心をえぐるようなお笑いはしたくなくなりました。人を追い込んだりするような笑いは、東北の人にしたくないなと」と明かした。

山形県の県民性にも影響を受けた様子。「俺が俺がじゃなくて、ちょっと恥ずかしがり屋で控えめな感じ。ロケで協力してくれた方としゃべっていると、肩を抱いてあげたくなるくらい愛おしくなるんです。『大丈夫だよ』って言いたくなる」。思わず手を差し伸ばしたくなるほど、優しい気持ちにさせられてしまう。

山形県を中心に活動するソラシド・本坊元児(提供・吉本興業)

「年を取ったのもあるかもしれないけど、昔は人がドカン!と転んだのを見て笑っていたのが、今は面白いんじゃなくて『怖っ!』ってなる。可愛いお婆ちゃんとか可愛い犬を見た方が、笑ってしまうようになった。笑いで言うと、トムとジェリーみたいなのが一番いいです。可愛いけど面白いなって」。ダウンタウンにあこがれた芸歴24年目のベテランは、1940年に米国で誕生したネコとネズミのドタバタアニメを理想の笑いに挙げた。

◆ソラシド・本坊元児(ほんぼう・がんじ) 1978年8月7日生まれ。愛媛県出身。NSC大阪校20期生で同期の大阪府出身の水口靖一郎(みずぐち・せいいちろう)と2001年1月に「ソラシド」を結成。2018年10月から住みます芸人として移住した山形県を中心に活動中。

山形県を中心に活動するソラシド・本坊元児(提供・吉本興業)

(よろず~ニュース・中江 寿)

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