自信なくした店長の新たな一歩 踏み出す勇気を与えた研修 ジャンボステーキハンズの軌跡【下】(AD)

 

 県内でも人気のステーキハウス「ジャンボステーキハンズ」。コロナ禍で倒産も覚悟したが、社員たちの成長で好調な業績を取り戻している。これまで敬遠してきた外部講師を招いた研修がきっかけだ。数値管理を基にした現状把握と課題解決に向けた実行が浸透してきた。仲本貴博代表(34)は組織力の向上を喜ぶが、ある店長の変化にも期待している。それは、研修前に辞職を相談してきた店長だった。 

 観光ピークの2023年8月、仲本代表は閑散期となる冬場に向けた営業戦略を40代男性店長に指示した。

 

 「近くの商業施設の従業員向けに企画をやりたい」。店長のレスポンスの早さに驚いた。さらに、従来の割引券配布ではなく、グランドメニューを売り込むという。「おいしさに自信のある商品をしっかり売りたい」といい、高品質な牛肉を打ち出すチラシを制作中だ。

 仲本代表は「これほど前向きにチャレンジしてくれるとは思わなかった」と喜ぶ。実は、この店長からは「辞めたい」と相談されていた。

「社員と共に自分自身の成長を実感している」とする仲本貴博代表(後列右)と外間慶大専務(後列左)

 アルバイトを含め、9人いるスタッフをまとめる自信がないという。変化が訪れたのは2022年7月から取り入れた外部講師の研修だった。

 研修では、それぞれの店長が管理職としての基礎を学び、現場で実践していく。今も続けており、仲本代表も一緒に受けている。その中に部下のモチベーションを高める「メンバーマネジメント」の研修があった。

コロナ禍からの業績回復について語り合う仲本貴博代表(左)と外間慶大専務

 「教える、励ます、任せる、正す」をコンセプトに部下のモチベーションを引き出すマネジメント方法。仕事を丸投げするのではなく、具体的手法をしっかり「教える」。「任せる」は、部下の動きを見守りつつ、重要な場面ではサポートすることで、しっかり経験を積んでもらう。「励ます」は、丁寧に声をかけ、前向きに挑戦してもらう。成功しても失敗しても結果に至った過程を振り返り、さらなる改善へつなげる「正す」で、次の成長につなげる。

 部下の言動を直接判断せず、「どうしてそういった言動にいたったか」という深層を探る手法もある。感情的にならず、落ち着いた対応ができ、部下も気付いていなかった本音を掘り起こせるメリットがある。

 研修を受けるたびに、店長の表情が明るくなっていったという。仲本代表は「部下との接し方を具体的に身につけたことで、コミュニケーションの不安が溶けていったようだ」。

 

 社員の成長はこれだけにとどまらない。

 店舗運営に必要な数字を毎週記入する「管理帳票」。数字を基にミーティングを進めることで、実態を把握した上で、対策を考えるシステムができあがった。

 提供時間を短縮するためのキッズメニューや、競争の激しいクリスマスシーズンでの限定メニューなどの提案も社員から出てきた。

 仲本代表は「いずれも成果につながっている。現場を知る社員だからこそ実現できた」とうれしそうに事例を紹介した。

 一方で、「失敗も多い」と苦笑する。

 

 それでも社員の提案を優先するのは「自分の提案が通ったら、うれしいのが人情。モチベーションも上がるし、失敗しても社員は経験を積める」。
 
 仲本代表は「コロナ前の私だったら、却下していただろう」とする。仲本代表の就任は2018年。沖縄経済は、人口と観光客の増加による好景気の真っ只中だった。就任初年度で過去最高の売上高を達成。翌2019年は、さらに伸ばした。「何をやってもうまくいく」と自信を深めた矢先のコロナだった。「プライドをへし折られたが、社員たちがいてくれたからこそ、乗り越えられた」と感謝する。

 その感謝と共に、研修を受けたことで、長期的な視点に立って社員の成長を考えるようになったという。「研修で一番成長したのは私」と恥ずかしそうに語った。 

 仲本代表は「いろいろな経験で、組織は強くなった」と断言。「自ら考え、行動する社員たちはハンズの財産。その社員たちと一緒に成長していくことが何より楽しいし、どんな困難も切り抜けられる」。

 

 ジャンボステーキハンズグループが取り入れた研修は「リデプロ」と呼ばれる。

 各社の経営状況に応じてカスタマイズできるのが特徴。ジャンボステーキハンズは経営分析を経て、数字に基づいた戦略立案ができる人材育成を優先課題に上げた。それに従って専門家と共に研修内容を決めていった。自社の経営分析から、戦略の設計と実施までを専門家がサポートし、企業の稼ぐ力向上につなげる。2022年度から始まり、これまでに10社が採択された。

 リデプロは「企業利益を最大化する、その鍵は人材戦略にあり」をテーマにした講演会を開く。経営者と従業員が一体となった研修で定評のある入江感動研究所の入江元太代表が講演する。1月30日(火)午後1時30分から、那覇市の沖縄産業支援センター1階102。

申込は下記フォームから
https://forms.gle/1V8NVsx5wBQC6mw39
〆切りは1月25日(木)
問い合わせは、(公財)沖縄県産業振興公社 事業支援課「リデプロ」事務局
TEL:098-859-6236 メール:k-jinzai@okinawa-ric.or.jp
受付時間:9:00~17:00(12:00~13:00 及び土日祝を除く)

 リデプロは、自社の経営状況の分析と課題の抽出を行い、企業の利益を出みだすためのBusiness(経営・事業・組織の仕組み)をRedesign(見直し・再設計)する研修プログラムだ。

 自社の課題解決に向けた人材育成計画書を経営者が作成し、その計画に合わせて、専門家を自社で選定し、研修内容をカスタマイズすることができる。

詳細は特設サイトからご確認ください。⇒ https://redeoki.com/

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