琉球ゴールデンキングスの「2つの顔」がどう出るか――EASL2023-24いよいよ大詰め、1/24(水)に沖縄アリーナで2度目の“キングス対決”

琉球ゴールデンキングスは、1月24日(水)に沖縄アリーナで、東アジアスーパーリーグ(EASL)におけるレギュラーシーズン最終戦を迎える。対戦相手はここまで4戦全勝でグループB首位のニュー台北キングス。グループA・Bの上位2チームで王座を争うファイナルラウンド進出を目指す琉球にとっては非常に大きな意味を持つ一戦だが、そこで気になる2023-24バージョンの琉球の二面性に着目してみたい。

ファイナルラウンド進出に向け負けられないEASLレギュラーシーズン最終戦

まずその前に、前回の“キングス対決”とEASLグループBの戦況を少し振り返ろう。1月10日にアウェイの新荘体育館(新北市)で行われた前回の対戦では、5,207人のファンが見守る中で両チームが接戦を演じた。結果は琉球にとって非常に厳しい63-67の黒星。琉球はフロントラインのタレントを故障で欠く中、ファウルトラブルにも苦しむ展開となった。堅固なゾーンディフェンスで得点力の高いニュー台北のオフェンスをよくしのいだが、第4Q残り26秒、元NBAのジェレミー・リンが今村佳太の厳しいクローズアウトの上から放った3Pショットがみごとにゴールを射抜き、ニュー台北が逃げ切った。

1月10日に行われた最初の“キングス対決”は、第4Q残り26秒にジェレミー・リンが成功させたこの3Pショットがニュー台北キングスの勝利を決定づけた(写真/©East Asia Super League/EASL)

この黒星で通算成績が2勝3敗となった琉球は、24日に行われる2度目の”キングス対決“に勝利しても、ファイナルラウンド進出を自力で決められない状況に追い込まれた。それをかなえるにはグループBの2位以上に入る必要があるが、ニュー台北がその1枠を勝ち取った一方で、残る1枠に対して現時点で脱落したチームはない。2位のソウルSKナイツ(2勝2敗)、3位の琉球に加えて4位(最下位)のメラルコ・ボルツ(1勝4敗)にも可能性がある。

琉球にとって最終戦での勝利は、現時点でファイナルラウンド進出の必要条件ではない。しかし、仮に敗れた場合にはその可能性が非常に小さくしぼんでしまう。なぜなら、琉球が最終戦に勝利して3勝3敗としても、ニュー台北とメラルコ相手に1試合ずつの対戦を残しているソウルがそのどちらかで1勝でも挙げて同勝率で並んだ場合には、ソウルが琉球との直接対決における得失点差のタイブレーカーを持っているからだ(琉球はソウルとの初戦に80-79で勝利したが、2度目の対戦で69-82の黒星を喫したので、両者間ではソウルが+12と上回っている)。

仮に琉球が敗れて2勝4敗となると、ソウルが1勝した時点で琉球の道は断たれる。また、その状況でソウルが2連敗する場合、それは同時にメラルコが2勝目を挙げることを意味しており、ソウルと琉球、メラルコの3チームが2勝4敗で並び、みつどもえのタイブレーカーの行方により運命が決まることになる。

2度目の“キングス対決”で勝っても負けても、琉球ブースターにとってはその後の展開から目が離せない状況だ。しかしどちらにしても、ニュータイペイ戦で琉球のカルチャーを十二分に感じさせる戦いを見た上で、運命をバスケットボールの神様に託したいと思うのがファン心理だろう。そこで気になるのが、今シーズンの琉球が見せている二面性である。

勝ち試合と負け試合の波が大きい2023-24シーズンの琉球

EASLにおける二面性は、琉球はホームでは負けていないがアウェイでは一つも勝てなかったという事実が端的に示している。要因を挙げるのは簡単ではないが、アウェイでの苦戦には現地のゲームマネジメントやコールの感覚的な違いに、メンタル面の一貫性をやや欠いてしまった側面はあったかもしれない。故障者の影響も大きかっただろう。しかし、レギュラーシーズン最後の“キングス対決”はホームであり、その観点からは勝利を期待したくなる舞台設定だ。

しかしもう一つ、Bリーグの2023-24シーズンにおける二面性は、そう単純な話でもない。1月21日に第18節を終えた時点で、琉球は21勝10敗(勝率.677)の成績で西地区首位に立っている。これは決して悪い成績ではないが、勝ち試合と負け試合が以下の通りまったく異なるデータを呈しているのが気になる点だ。

☆勝ち試合: 平均得点83.3、平均失点73.5
★負け試合: 平均得点70.7、平均失点80.8

勝つとき、負けるときの対照的な試合の集計なのだから、ある意味では当たり前と捉えることもできるかもしれない。しかし10敗のうち3試合が20点差を超える大敗。平均でも点差が10.1というのは、差が大きすぎはしないだろうか。

実は昨シーズンの琉球にも同じような傾向があった。シーズン全体の成績は48勝12敗だったが、正月7日までに喫した7つの黒星のうち、5試合で点差を2桁以上離されていた。7試合平均は13.9点差で、今シーズンの負け試合における平均よりも大きい。

ところがそれ以降は、同じ黒星でも数字的にはまったく異なる。敗れた試合は5試合だったが、最終的に5点差以上での負けはその中に一つもない。勝率が上がっただけではなく、負け試合でも簡単には折れないチームになっていたことがうかがえる。前半戦で必要なテストを重ねながら作り上げた土台が、後半戦でさらに強固に踏み固められていったことを示しているように見えるのだ。

今年も同じ経過をたどるとすれば、キングスはここからぐんぐん力を発揮していく。今村佳太がレギュラーシーズンでのキャリアハイとなる得点力でチームをけん引し、闘志あふれるプレーでチームを鼓舞する若手の植松義也が頭角を示し始めていることなどが、その希望を膨らませる。岸本隆一が地元でのオールスターゲームでMVPに輝いたことも、弾みをつけるニュースに違いない。

オールスターでのMVP受賞は、岸本隆一にとって後半戦でのパフォーマンスに弾みをつける出来事に違いない(写真/©B.LEAGUE)

しかし、EASLでの苦戦も一つの兆候として、チーム状況が順調とも思いにくい。1月6日のファイティングイーグルス名古屋戦に57-68で敗れた後、桶谷大HCはロッカールームでチームに「ふざけんな!」と 喝を入れたことを、翌日のインタビューで明かしている。令和6年能登地震の発生で平穏な日常を奪われた人々がいる中、バスケットボールをできるという恵まれた環境でのふがいない結果に、感情が爆発したという側面もあるだろう。しかしチームが期待すべき状況ならば、勝敗だけではそうならなかったはずだ。

その後琉球は、17日に名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの接戦に75-77で敗れ、さらに翌18日にはカール・タマヨとの契約解除を発表。タマヨはニュー台北戦で16得点を挙げる活躍を見せ、オールスターブレイクのアジア・ライジングスターにも出場していただけに、この発表はブースターを驚かせたことだろう。この流れを含むBリーグでの直近10試合で、琉球は4勝6敗と負け越している。

この状況で、NBAチャンピオンの勲章を持つジェレミー・リンを擁するニュー台北をホームに迎える“キングス決戦”。はたして我々が目にするのは、ホームで強い琉球、ディフェンスとリバウンドを土台に最後まで戦い、勝ち切る王者のカルチャーだろうか。それとも、負けが込んで不安定な状態を引きずる姿だろうか。注目の一戦は、琉球のBリーグにおける今後を占う試金石とも言えそうだ。

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