沖縄に雪が降ったことはある? ない? 8年前は寒波到来に大騒ぎ

 

 1月下旬の大寒の頃は、全国各地で大雪や寒さのニュースが出ますが、南国沖縄でも過去に雪が降ったことがあるのをご存知でしょうか。

那覇市内であられが降りニュースになった。車の屋根に落ちたあられ=1977年2月

1977年と2016年にみぞれを観測

 沖縄気象台の観測開始以降、沖縄本島地方での雪の記録としては、1977年2月17日の久米島でのみぞれの観測と、2016年1月24日~25日の久米島や名護でのみぞれの観測があります。みぞれは気象の観測上は「雪」になります。

あられのようなものが降った=2016年1月25日、国頭村佐手

 2016年の1月25日~26日、私はたまたま本島北部に滞在していました。沖縄でみぞれ(観測上は雪)が降ってくるという歴史的な瞬間を目撃できたのは大変貴重な体験でした。ほんの一瞬で雨に変わっていきましたが、その様子が目に焼き付いています。

2016年1月25日あられの写真(沖縄気象台ホームページより加工)

 “何かが降るかもしれない日”の1週間くらい前から、気象の専門的な天気図の予測には、今まで沖縄付近では見たこともない寒さを表現する寒気や数値が具体的に表現されていました。全国の報道でもまさか沖縄で雪が降るのか?との話題が大きく取り上げられ、沖縄県内でも雪の話題でもちきりでした。

 当時記録した沖縄の様子です。

 極値の更新とまでいかなくとも寒波のイメージがあまりない沖縄の皆さんは「何を着たらいいんだろう」「手袋なんて持っていない」「そもそも雪を見たことがない」など、どこまで寒くなるのかという期待感と、これまで経験をしたことのない冷え込みになるかもしれないという戸惑いが入り交じっているようです。

 当日、沖縄では実際にみぞれやあられが降ったのです。天気図には等圧線が何本も並び、衛星画像には寒気に伴う雲が沖縄付近に流れ込んでいました。

2016年1月24日午後9時の天気図(ウェザーマップ)

 降った日の翌日は月曜日で、琉球放送(RBC)の平日の夕方ニュース番組があり、ニュースの中での雪の解説、天気コーナーでは時間を拡大して解説、その後も生放送の特番出演解説という流れでした。

 気象データを振り返ってみましょう。2016年1月24日から25日にかけて日本付近は強い冬型の気圧配置となり、上空約1500メートル付近には、沖縄地方付近まで-6℃以下の非常に強い寒気が流れ込みました。また、多くの観測所で1月の日最低気温や日最高気温のいずれも低い方からの極値を更新しました。1月24日夜遅くから1月25日未明にかけて久米島や名護ではみぞれ、那覇ではあられを観測しました。みぞれの観測は、久米島では1977年2月17日以来39年ぶり、沖縄本島では観測開始以降初めてのこととなりました。

2016年1月24日午後9時の衛星画像(ウェザーマップ)

気象台発表は「寒さで豚が凍死するおそれ」

 沖縄気象台の報道発表資料では、【寒さで沖縄の子豚が凍死するおそれ】という注意喚起があり、【沖縄で初の"低温注意報"】も発表されました。(低温注意報は、運用が開始された2014年10月9日以降、初めての発表)

 沖縄気象台の2016年1月24日報道発表資料より、畜産関係の抜粋です。

 畜産関係では、体力の弱い子豚など小さな家畜等も凍死した例が過去に発生していますので、これら家畜などに対する管理にも注意する必要があります。その他に、気温がかなり低くなるため、お年寄りやお子様など、体調面での健康管理にも十分な配慮が必要となります。また過去には沖縄地方で低温及び霜による災害が、昭和38 年1月豪雪(気象庁命名) に伴う異常寒波時に発生しています。

〈ひょう・あられ・みぞれ〉
雹(ひょう)…直径5mm以上の氷の粒のこと
霰(あられ)…直径5mm未満の氷の粒こと
霙(みぞれ)…雨まじりの雪

 実際に沖縄の雪を経験した方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。この日の観測以降、沖縄の雪に関する気象データは全てアップデートされました。南国沖縄にも雪が降るという貴重な日として記録されています。

来週は31日ごろから再び夏日予想

 今週は、寒気の影響で県内各地の最低気温が10℃前後まで下がったところもあり、沖縄県民にとって震える寒さとなりましたが、この先は暖かく湿った空気の影響で1月29日(月)ごろから日ごとに気温が上がる予想です。

2月11日(日)にかけての那覇の天気と気温の予想 ※1月26日(金)午前11時、ウェザーマップ発表

 1月31日(水)ごろから2月5日(月)ごろにかけての最高気温は、那覇では25℃を超えて夏日となる見通しです。

 その後、2月8日(木)ごろから気温が低くなり、那覇の最低気温は13℃前後の予想です。冬服は手元に残しておくことをおススメします。

 2月中旬にかけて、気温のアップダウンが大きくなりますのでご注意ください。

本島や大東島地方は概ね曇り

 沖縄本島地方や大東島地方は概ね曇り、先島諸島では雨雲が残りやすいでしょう。県内各地の最低気温は、15℃前後、最高気温は20℃を下回るかどうかで、平年よりやや低い気温となりそうです。

沖縄本島地方・大東島地方の予報 ※1月26日(金)午前11時、ウェザーマップ発表
宮古島地方・八重山地方の予報 ※1月26日(金)午前11時、ウェザーマップ発表

強く降る雨でない見通し

 沖縄本島地方や先島諸島では、1月28日(日)の未明から明け方にかけてひと雨降りそうです。強く降る雨ではない見通しで、お出かけに大きな影響はなさそうです。雨の後は北風が強まり、薄着では寒く感じられそうです。

1月28日(日)午前3時の雨と風の予想 ※1月26日(金)午前11時現在、ウェザーマップ

〈沖縄タイムスの「雪」の過去記事はこちらから〉

崎濱綾子
気象予報士/防災士(株式会社ウェザーマップ)
 沖縄県宜野湾市生まれ。ミスはごろもとして地元の観光大使を務める。RBC琉球放送でラジオ・テレビのリポーター、QAB琉球朝日放送で気象キャスターを担当。2005年に沖縄初の女性気象予報士となる。2005~2016年3月までRBC琉球放送の夕方のニュース番組で月~金曜日の気象キャスターを担当。2016年4月から東京の本社で勤務。Yahoo!ニュース動画出演・記事執筆を担当。Yahoo!ニュースエキスパート。好きな天気現象は、夏至南風(カーチーベー)。

© 株式会社沖縄タイムス社