日本の月面探査機SLIM、運用が再開 「通信を確立」とJAXA

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は29日、20日未明に月面着陸した月探査機「SLIM(スリム)」について、運用を再開したと発表した。SLIMは着陸後に太陽電池による発電が確認できず、22日から電源が切られていた。

は、28日夜に「SLIMとの通信を確立することに成功し、運用を再開」したと説明。不具合が修正されたことを示唆した。

JAXAの小型月着陸実証機SLIM (Smart Lander for Investigating Moon) は20日、月の赤道に近いクレーター周辺に軟着陸した。これによって日本は、アメリカ、旧ソヴィエト連邦、中国、インドに続き、月面着陸を成功させた五つ目の国となった。

JAXAによると、SLIMは想定と異なる姿勢で月面に着陸した。太陽電池が西を向いていたため、太陽光が当たら発電できずにいた。

SLIMは着陸後数時間はバッテリー電力に依存していたが、JAXAはその電力を温存するために電源を切ることを決めた。JAXAは月面に差す太陽光の角度が変われば、SLIMの太陽電池が起動する可能性があるとしていた。

JAXAによるとその後、太陽光の照射状況が変わり、再び運用できるようになったという。

、SLIMが撮影したという観察対象の岩「トイプードル」の画像も公開した。

SLIMは月の起源に関する手がかりを探るため、月面の岩石の組成などを調べる予定。

この月面探査計画は、高精度の「ピンポイント着陸」技術を使ったもの。SLIMは月面赤道のすぐ南に位置するシオリ・クレーター内の目標地点から約55メートル以内に着陸した。

JAXAは、この着陸技術によって将来的に、燃料や水、酸素の供給源となる可能性があると考えられている、起伏の多い月の北極と南極の探査ができるようになる可能性があるとしている。

日本はSLIM計画以前にも、いくつかの月探査計画を試みてきたが、失敗に終わっている。

昨年には日本の民間企業、ispace (アイスペース)が月面着陸を試みた。しかし同社の「HAKUTO-R」は、搭載コンピューターのソフトウェア不具合で月面上の正しい高度が判断できず、月面に落下した。

過去の事例から統計的に、月面着陸は非常に困難なことが分かっている。成功例は約半数にとどまっている。

JAXAは、SLIMがいつ月面で活動するのか、明言していない。月面は約2週間ごとに昼と夜が繰り返される。JAXAは以前、SLIMは月面の夜に耐えられる設計にはなっていないと説明していた。

(英語記事 Japan Moon lander wakes up and resumes mission

© BBCグローバルニュースジャパン株式会社