横浜市予算案 一般会計は微増1兆9156億円 出産費用の負担軽減策実現

2024年度当初予算案について説明する山中市長=横浜市役所

 横浜市は29日、2024年度当初予算案を発表した。一般会計は前年度当初比0.7%増の1兆9156億円。義務的経費の増加などを踏まえ、3年ぶりのプラス編成とした。歳出入の見直しにより捻出した財源は、山中竹春市長が前面に押し出す子育て支援施策に重点的に配分。21年の市長選で主要公約に掲げた「三つのゼロ」の一つ、出産費用の負担軽減策も実現にこぎ着けた。

 歳入の柱となる市税収入は、2.2%増の8830億円と当初予算ベースで過去最高を見込む。3年に一度の土地の評価替えによる固定資産税の増収に加え、1人当たりの給与所得と納税者数の増加に伴う個人市民税の増収や好調な企業収益を受けた法人市民税の増収が寄与する。市税のうち20億円は補正予算の財源に充てるため、当初予算案には計上していない。

 一方、ふるさと納税による個人市民税の流出額は291億円に上り、地方交付税での約4分の3の補塡(ほてん)や寄付受入額を差し引いても約60億円のマイナスとなる見通し。政府の定額減税に伴う減収額227億円は、地方特例交付金で全額穴埋めされる。

 歳出の6割は義務的経費が占めた。内訳は福祉や保健、医療、保育などに必要な扶助費をはじめ、人件費、公債費の三つで、計1兆1614億円に上る。

 財源捻出の取り組みでは、事業の位置付けや内容を再検討するとともに、経費や補助金の見直しを推進。▽下水道事業会計への繰り出しの一部終了▽市庁舎エレベーターなどの運用保守仕様の変更▽工業技術支援センター(金沢区)の廃止─などにより、51億円の歳出を削減し、21億円の歳入を確保したという。

 これらの結果、借入金に当たる市債の発行は7.2%減の1066億円に抑制。市債償還の原資となる減債基金の取り崩しも11.8%減の150億円に抑え、財政ビジョンで掲げている30年度までの取り崩しゼロ達成に近づいた。

 貯金に相当する財政調整基金の24年度末残高は、実質ベースで225億円を超えると予測。新型コロナウイルス禍で発行した赤字地方債(459億円)の残高は404億円、13年度に起債した第三セクター等改革推進債(1383億円)の残高は339億円になると見込む。

 市長の主要公約「三つのゼロ」を巡っては、出産費用の負担軽減策として、出産育児一時金に上乗せする形で最大9万円の助成に乗りだす。中学3年生までの医療費無償化は昨年8月に実現しており、残る敬老パスの75歳以上無料化については、引き続き利用実績の分析を進める。

 このほか、子育て支援や脱炭素関連で複数の新規事業を展開。26年度の開始を目指すデリバリー方式での中学校全員給食の準備費用や、27年に国際園芸博覧会(園芸博)が開催される上瀬谷通信施設跡地(瀬谷、旭区)の活用に向けた事業費なども盛り込んだ。

【2024年度当初予算案】

一般会計 1兆9156億円( 0.7%増)
特別会計 1兆3079億円( 0.1%増)
企業会計   6110億円( 3.2%増)
……………………………………………
総  計 3兆8345億円( 0.9%増)
※カッコ内は2023年度当初比

© 株式会社神奈川新聞社