フィギュア女子のワリエワ選手、4年間の資格停止処分 日本は北京五輪団体「銀メダル」に

スポーツ仲裁裁判所(CAS)は29日、ドーピング検査で陽性と判定されたものの、2022年の北京冬季オリンピックへの出場が認められたフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手(17、ロシア)について、ドーピング検査が実施された2021年12月から4年間、資格停止とする裁定を出した。これを受け、国際スケート連盟(ISU)は30日、北京五輪団体で暫定2位だったアメリカが金メダル、3位だった日本が銀メダルにそれぞれ繰り上がると発表した。

CASの裁定により、陽性となった検体が提出された2021年12月25日以降に出場したワリエワ選手のすべての競技成績が取り消される。

ワリエワ選手は北京五輪にロシア・オリンピック委員会(ROC)のメンバーとして出場し、団体戦で1位、個人戦で4位となっていた。

国際スケート連盟(ISU)は30日、CASの裁定を受けて、団体戦の順位を発表。ワリエワ選手の成績が取り消されたことで、暫定2位だったアメリカが金メダル、3位だった日本が銀メダルにそれぞれ繰り上がった。ROCは4位のカナダを1ポイント上回り銅メダルになった。

国際オリンピック委員会(IOC)は、メダルが授与されるのを「待たなければならなかったアスリートたちに深く同情する」とした。

カナダが不服申し立ても

フィギュアスケート団体は、男子シングル、女子シングル、ペア(いずれもショートとフリー)、アイスダンス(リズムダンスとフリーダンス)の4種目で競う。種目ごとに順位に応じてポイントが与えられ、ポイントの合計で総合順位を決める。

ワリエワ選手は、団体戦の女子シングルのショートとフリーに出場。いずれも1位となり、ROCに10ポイントずつ加算された。日本はいずれも2位で9ポイントずつ、カナダはいずれも3位で8ポイントずつ、それぞれ獲得した。

ISUは今回、ワリエワ選手が獲得した計20ポイントを取り消した。ただ、日本とカナダの女子シングルの順位は繰り上げず、ポイントも据え置いた。

仮に、カナダに追加で2ポイント(女子ショートとフリーで2位)が付与されれば、カナダの合計ポイントは55となり、ROCの54を上回って銅メダル獲得となる。アメリカと日本の最終順位は、ポイントが追加されても変わらない。

カナダのオリンピック委員会(COC)とカナダ・スケート連盟は、ISUの決定に「非常に失望した」と表明。

「この件に関するISUの見解に、強く反対する。この決定に異議を申し立てるあらゆる選択肢を検討する」と、カナダ・スケート連盟は付け加えた。

COCは異議を申し立てる選択肢を探るため、カナダ・スケート連盟と協議中だとし、次のように付け加えた。

「私たちは、このプロセスがすべての選手にとっていかに困難なものであるかを認識するとともに、私たちをこれほど誇らしい気持ちにさせてくれたカナダのスケーターたちをサポートしている。今回の件はドーピングがいかに有害であるか、そして、公正かつ安全なスポーツシステムがいかに重要であるかを国内、そして世界中に知らしめるものだ」

メダル授与式に向け関係先に連絡

IOCの広報担当は、「CASがこの件で明確な裁定を出し、2022年北京冬季オリンピックのフィギュアスケート団体に出場したアスリートたちが、長い間待ち望んでいたメダルをようやく手にすることができるという事実を歓迎する」と述べた。

「IOCはいま、メダルを授与する立場にある。競技の最終結果を得るために2年間待たなければならなかった選手たちに深く同情する」

IOCは「威厳のあるオリンピック・メダル授与式を開催するため」、関係各国のオリンピック委員会に連絡するとした。

ワリエワ選手のケースについては、「ドーピング事案において、アスリートの周囲にいる人々が果たす役割に対処する必要性がさらに証明された。アスリートが未成年であればなおさら、周囲に依存することになるので、その重要度は高まる」と付け加えた。

米オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)のサラ・ハーシュランド最高経営責任者(CEO)は、CASの裁定を受け、「私たちはいま、世界中の仲間とともに、このアスリートたちを心から祝福できる日を心待ちにしている」と述べた。

一方、ロシア政府はCASの裁定も、団体戦銅メダルに降格するという決定も受け入れないと表明。ロシア選手の権利を擁護するとしている。

ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、「この件でたとえどのような決定が出されようとも、たとえそれが不公正なものであっても、我々は彼らがオリンピックチャンピオンであり続けると確信している」と述べた。

ロシア・オリンピック委員会(ROC)はISUの決定に不服申し立てを行う意向だとしている。

五輪開幕後に発覚

ワリエワ選手は15歳だった2021年12月25日のドーピング検査で、狭心症を防ぐ薬物トリメタジジンが検出され陽性となった。北京五輪のフィギュアスケート団体の競技が終わった後の2022年2月8日になってこの結果が通知され、暫定的な資格停止とされたが、異議を申し立てた。翌日、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)が資格停止を解除した。

この解除を不服として、国際オリンピック委員会(IOC)、世界反ドーピング機関(WADA)、国際スケート連盟(ISU)がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴。CASは同14日、ワリエワ選手の年齢や検査結果の通知のタイミングなどの「例外的な状況」を理由に、暫定的な資格停止にすべきではないと決定し、ワリエワ選手は北京五輪への出場が可能になった。

女子ショートプログラムは、出場が認められた翌日に行われ、ワリエワ選手は首位に立った。しかし、フリースケーティングではジャンプに失敗するなどして4位に終わった。

北京五輪でロシアの選手は、同国による過去の組織的ドーピングに対する制裁措置により国を代表して出場することはできず、ロシア・オリンピック委員会(ROC)として出場した。

(英語記事 IOC to award medals after Valieva doping ban

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