「間違いは間違い」と生涯言い続けた人権活動家「フレッド・コレマツの日」 ─ 全米各地で

By 「ニューヨーク直行便」安部かすみ

ニュージャージーのイベントで上映された映画の1コマ。(c) Kasumi Abe

「間違いは間違いだ」

犯罪を犯したわけでもないのに、戦時中にただ日本人というだけで財産を没収され強制収容所に入れられたこと。また収容所入りを拒否した人を不当に逮捕・投獄したこと。これらは絶対に間違った行いだった ── 。

生涯そう言い続け、この国で起こった差別を認めず、正義のために一生を捧げた人権活動家で公民権運動の先駆者、フレッド・コレマツ(Fred Korematsu)氏。86歳で閉じたその生涯を讃え、彼の誕生日である1月30日が「フレッド・コレマツの日」として全米各地に少しずつ広がっている。ニューヨーク市やニュージャージーのフォートリー区に続き、昨年はいよいよニュージャージー州で正式に認められた。

今年もこの記念日を祝うため、フォートリーには近隣に住む日系アメリカ人や在米日本人が集まった。

フレッド・コレマツ(Fred Korematsu)とは?

日系2世のフレッド・コレマツ(是松豊三郎)氏とは、第二次世界大戦中に不当に逮捕、投獄された自身や日系人の正義のため、そしてあらゆる差別と闘うために生涯を捧げた公民権活動家である。

1983年、サンフランシスコの連邦地裁で自身の有罪判決が覆され、88年に米政府が誤ちを認めレーガン大統領(当時)が人権擁護法に署名。数年かけて大統領からの謝罪文と補償金2万ドルが日系人の生存者と遺族全員に贈られた。その後2018年には最高裁も強制収容が憲法違反であると認めた。コレマツ氏はそれらの結果の礎を築いた人物。民間人への最高位の栄誉、大統領自由勲章を受章している(1998年)。

参照
正義訴え不法投獄、人権活動家フレッド・コレマツの人生を辿る ── 日系人強制収容から81年

今年は会場となった同州のバリモア・フィルムセンターで、あるドキュメンタリー映画のトレーラーが上映された。それは、戦時下に日系人を強制的に収監したカリフォルニア州マンザナー収容所が舞台の『スリーボーイ・マンザナー』(THREE BOYS MANZANAR)。70年後に再会した3人の元少年を描いた2017年の作品だ。この映画のプロデューサー兼ナレーターのAkemi Ooka氏と、この日の記念イベントの司会進行役を務めたElisabeth Tamiko Ooka氏は姉妹で、映画に登場したOoka氏(3人のうち背の高い少年)の娘にあたる。映画は2022年のエミー賞にノミネートされた。

THREE BOYS MANZANAR

またこの日の壇上では、自身も収容所で生まれ、現在は日系人の地位向上のために尽力する古本武司さんや、フォートリーのマーク・ソコリッチ区長ら7名が挨拶し、間違った歴史を2度と繰り返さないことの大切さを力説した。

フレッド・コレマツの日はアメリカでアジア系米国人にちなんで名付けられた初の記念日にあたり、ニュージャージー州ほかカリフォルニア州やハワイ州、ニューヨーク市などで制定されている。今後ニューヨーク州などより広い地域でコレマツ氏の功績が啓蒙され正式な記念日として認められるよう、古本さんら活動家らは今後も引き続き、行政に働きがけをするとしている。

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Text and some photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース エキスパート「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)本記事の無断転載禁止

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