EU、ウクライナ支援パッケージを承認 7.9兆円相当

ラウラ・ゴッツィ、サラ・レインズフォード、BBCニュース

欧州連合(EU)の加盟27カ国は1日、ウクライナに対する500億ユーロ(約7兆9500億円)相当の支援パッケージを承認した。これまで、ハンガリーが反対していた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は新たな支援を歓迎。同国の経済と財政の安定につながると述べた。

ウクライナ経済省によると、支援の第1弾は3月に届けられるという。

昨年12月のEU首脳会議(サミット)では、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相が支援策に拒否権を発動し、否決されていた。今回も、ハンガリーが支援を阻止するのではないかとの懸念が広がっていた。

オルバン首相は、EUの中では最もロシアのウラジミール・プーチン大統領に近い。オルバン氏は先に、ウクライナに対するEUの政策を再考させたいと述べ、向こう4年にわたってウクライナに資金を提供することに疑問を呈していた。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「この支援が、アメリカが同じことをするきっかけになると思う」と述べた。アメリカでも昨年末、連邦議会が対ウクライナ支援策を否決し、協議が滞っている。

短時間の承認に驚きも

EUの支援の承認は、今回のサミットが始まってから2時間以内に発表された。オルバン氏と他のEU首脳とのあつれきで協議が長引くと思われていただけに、早急な決定に驚きの声も上がった。

ただし、EUの支援は前線ではなく、後方で生活する人々向けだ。

ウクライナは国家予算を戦争につぎ込んでいる一方で、年金や公務員給与などの支払いも続けなければならない。EUが支援を承認しなかった場合、こうした支払いが遅れるとの警告も出ていた。

ウクライナが友好国に支援継続を求めるなかでも、国民生活を可能な限り円滑に維持することは、戦争への支持を維持するために不可欠だ。

新たな協定には、資金パッケージについて1年ごとに話し合うことと、「必要であれば」2年後に見直すオプションが含まれている。このオプションは、欧州理事会の裁量にゆだねられている。

オルバン氏は、この協定について毎年投票を行うよう求めていた。これは、支援が毎年、ハンガリーの拒否権の脅威にさらされる可能性があった。

武器供給についても協議

協定ではまた、ウクライナを支援する前提条件として、ウクライナが「少数民族に属する人々の権利」を支持することが挙げられている。これは、ウクライナにおけるハンガリー系少数民族に対するオルバン氏の長年の懸念に言及している可能性がある。

サミットではウクライナへの武器供給についても協議された。

EUは今週初め、3月までに送るとしていた弾薬100万発のうち52%しか届けられていないと認めた。欧州理事会のシャルル・ミシェル議長は1日、EUはウクライナが「自国と自国の未来」を守るために必要な装備を確実に入手できるようにする決意があると述べた。

ゼレンスキー氏はEU首脳に向けたビデオ演説で、EUは「その言葉が重要であり、その約束が欧州全体の利益に寄与すると証明した」と述べた。

また、米国の援助が議会によって阻止されていることに言及し、今回の発表が「大西洋を越えて(中略)国際ルールに基づく世界秩序が、あらゆる挑戦に耐えるというシグナルを送るだろう」と話した。

「欧州はその団結力によって、世界情勢の基調を定めている」と、ゼレンスキー氏は付け加えた。

EUは昨年12月のサミットで、ウクライナの加盟交渉を開始することに合意している。ハンガリーのオルバン首相は、この時は拒否権を発動せず、採決の際に一時的に会議場から退出した。

(英語記事 EU leaders unlock €50bn support package for Ukraine

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