「所有者が責任問われる」 逗子斜面崩落4年で専門家、マンション管理の体制強化訴え

土屋輝之さん(さくら事務所提供)

 悲惨な事故を繰り返さないためには何が大切か。住宅診断や管理組合向けコンサルティングなど、神奈川県内外の約6万4千組が利用するさくら事務所(東京都)のマンション管理コンサルタント・土屋輝之さんは、敷地管理体制を強化する重要性を指摘している。

 昨年12月の横浜地裁判決は、管理会社「大京アステージ」と事故当時の担当社員に賠償を命じた。崩落原因は斜面の風化と指摘。管理員が事故前日、約2~4メートルの亀裂を社員に写真付きで報告しており、亀裂は一般的に崩落の前兆で社員は危険を認識できたのに対応を怠ったと認定。市に通行止めを求めるなどすべきで、通行人の安全を確保する義務もあったとした。

 また同社には、風化を指摘した2003年の地質報告書を売り主から受け取ったのに確認せず、斜面の危険性を従業員に説明し亀裂発見時の速やかな結果回避措置を指示しておく義務も怠ったと判決で指弾した。

 判決を踏まえ、土屋さんは「組合運営のサポートや積立金相談などだけではなく、管理会社の仕事とは何かが明確に示された。管理会社の社員1人が担当する物件は約10~15件と多い。敷地で異常を把握した際の早期対応などが共有できている会社はどれほどあるか。仕事のありようを考え直さなければ」と強調する。

 判決は1億円を支払い遺族と和解した区分所有者の住民側に対し「亀裂は土地工作物の瑕疵(かし)に当たり、管理組合らの責任は免れない」と言及。訴訟では斜面管理を巡り、住民と管理会社との認識のずれが露呈した。

 「管理会社任せだけで良いわけではない。何より敷地所有者の住民の当事者意識が重要だ。民有地の対策は所有者が行うのが原則。第三者に損害を加えた場合、所有者が責任を問われる」と指摘する土屋さん。「マンションはそもそも土地を買う認識が希薄になりがちな不動産。住民が所有管理する範囲を日頃から把握し、関係者間で協議して対策を進める重要性を全国のマンションや土地所有者が事故から受け取らなければ」と注意を呼びかける。

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