中国、オーストラリア人作家に猶予付き死刑判決

中国の裁判所は5日、2019年に中国当局に拘束され、スパイ容疑がかけられていたオーストラリア人作家のヤン・ヘンジュン(楊恒均)氏(58)に対し、執行猶予付きの死刑判決を言い渡した。

オーストラリア当局によると、この判決は2年後に終身刑に減刑される可能性がある。

ヤン氏は博士号をもつ学者で小説家。中国の国家問題に関してブログを書いていた。罪状は明らかにされていないが、ヤン氏は罪状を否認している。

オーストラリア政府はこの結果に「がくぜんとしている」とした。

オーストラリアと中国は近年、関係が悪化しており、アンソニー・アルバニージー豪首相が昨年11月に訪中。改善を図っていた。

ペニー・ウォン豪外相は、中国の駐豪大使を召喚し説明を要求。また、中国政府に対し、「最も強い言葉」で豪政府の対応を「伝える」とし、次のように述べた。

「ヤン博士に対して、国際規範と中国の法的義務に従って基本的な正義の基準、手続き上の公正さ、人道的な扱いが適用されるよう、私たちは一貫して求めてきた」

「オーストラリアの全国民が、ヤン博士が家族と再会することを望んでいる。私たちは擁護の手を緩めはしない」

豪当局は以前から、ヤン氏の処遇に懸念を示していた。これに対し中国外務省は、この問題に干渉せず、中国の「司法主権」を尊重するよう豪当局に警告していた。

中国外務省の王文斌報道官は記者会見で、ヤン氏の事件は法律に従って「厳格に取り扱われた」とし、同氏の権利は尊重されていると述べた。

ヤン氏の支持者らは、同氏の拘束を「政治的迫害」と批判している。

シドニーの学者で友人の馮崇義氏は「彼は中国における人権侵害を批判し、人権、民主主義、法の支配といった普遍的な価値を提唱したために、中国政府によって罰せられた」とBBCに話した。

かつて中国の国家安全省に勤務していたヤン氏は、「民主小販(民主主義の行商人)」とあだ名されていた。ただ、その著作は直接的な政府批判は避けることが多かった。

米ニューヨークで暮らしていたが、2019年1月に妻と妻の子ども(共に中国籍)を連れ中国・広州へビザ取得のために旅行した際、空港で拘束された。

以来、裁判はほぼすべて密室で開かれてきた。

ウォン豪外相は、ヤン氏にはまだ控訴の道が残されているとしている。ただ、オーストラリア在住のヤン氏の息子たちは以前、同氏の健康状態が悪化しており、治療を受けていないと述べていた。

豪シンクタンク「ローウィ研究所」シニアフェローのリチャード・マグレガー氏は、ヤン氏の判決は豪中関係に「深刻な影響」を与えるだろうと、豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドに述べた。

「(今回の判決は)中国の法制度の不透明さ、外国政府が自国民のためにする合理的な要求への不寛容さ、政府に異議を唱える人々に対する執念深さを大々的に示している」

「予想し得たものの中で最も極端な判決だ。彼が獄中で死ぬということが避けられない」

(英語記事 Yang Hengjun: Australian writer given suspended death sentence in China

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