岸田首相はなぜ「増税メガネ」と呼ばれるのか?増税の内容と目的、今後の見通しは

2023年は、税制の見直しによる増税が実施、検討されました。

岸田首相は「増税メガネ」とまでいわれていますが、実際にどのような増税を検討・実施したのでしょうか。

この記事では、岸田首相が検討・実施した増税の内容や、今後の増税の見通しについて解説します。

岸田首相が検討・実行した増税

岸田首相が検討・実施した増税案を3つ、ピックアップしました。

  • 防衛増税
  • 森林環境税
  • 扶養控除の見直し

防衛増税

2022年12月に岸田首相は、2023年度から5年間で5兆円の防衛費増額を決定しました。

その財源として候補に挙がったのは、「法人税」「所得税」「たばこ税」の増税です。

具体的に検討された増税案は、次の通りです。

  • 主に大企業を対象とした法人税への4.0~4.5%の付加税
  • 所得税への1%の付加税
  • たばこ税は1本当たり3円相当の段階的な引き上げ

増税を検討した時点では、自民党内の反発が予想以上に大きかったため、2022年12月の与党税制大綱には、明確な開始時期を明記できませんでした。

また、2023年10月には、岸田首相が「2024年度からの増税は実施しない」考えを表明しました。

これによって、現時点では2024年度に増税が開始される可能性は、ほぼ消滅しています。

森林環境税

2023年1月、岸田首相は、森林資源の保全・再生を目的とした「森林環境税」の創設を決定しました。

森林環境税は、2024年度分の住民税に上乗せされる形で徴収がスタートします。

金額は年額で一律1,000円です。

2023年度までは地方自治体の防災施策費として年間1,000円が徴収されているため、負担が増えることはありません。

詳しくはこちらの記事「【新しい税金】森林環境税の負担はいつから?二重課税や使い道が不明などの問題点も」を参考にしてください。

扶養控除の見直し

2024年度税制改正によって、子育て支援と、扶養控除の見直しが決定されました。

子ども手当の対象を18歳まで拡大するかわりに、所得税の控除額は年間38万円から25万円へ、住民税の控除額は年間33万円から12万円となります。

所得税は2026年以降、住民税は2027年以降に適用されます。

「実質的な増税ではないか?」という声も多数あがりましたが、政府は、子育て世代においては子ども手当の拡充によって控除よりも手取りは増えるとしています。

扶養控除のシミュレーションについては、こちらの記事「高校生の扶養控除が25万円に減額。年収別に児童手当との差し引き額をシミュレーション」も参考にしてください。

岸田首相が増税する理由とは?

岸田首相が増税する理由としては、以下2点が考えられます。

  • 国際情勢に対応するための防衛費増額
  • 少子高齢化へ対応するための財源確保

増税の大きな根拠となっているものの1つに「防衛費」があります。

ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、岸田首相は防衛費を5年間で43兆円増額することを決定しました。

安倍晋三元首相が「防衛費は次の世代に祖国を残していくための予算だ」として国債での対応を主張していたこともあり、増税で増額分をまかなうことについて、自民党内や世論も賛否両論です。

人口減少による税収の減少も、増税の根拠となる大きな要因です。

人口減少による税収の減少は、少子化が止まらない限り続いていきます。

加えて、高齢者の割合が増えていくとなると、社会保障はいまよりもさらにひっ迫するでしょう。

今後の増税も充分に考えられる

防衛増税の実行はいまのところ停止していますが、防衛費予算増額は決定しているため、財源確保はどこかで行われます。

所得税への1%の付加税の可能性は、まだ残っているといえるでしょう。

実質増税といわれたインボイス制度の実施のように、細かい税制度の見直しは今後も実施される可能性があります。

引き続き、政府の動向に注目が集まります。

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