衛星通信技術とドローンを活用し、被災地情報をリアルタイムで共有へ 近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所などが奈良県五條市で実証実験

赤谷地区の大規模崩落箇所に向かって飛び立つドローン=6日、五條市大塔町

 国交省の防災対策事業で、近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所(奈良県五條市三在町)などは6日、衛星通信技術と高性能ドローンを活用し、山間部の被災地情報をリアルタイムで共有する実証実験を同市大塔町赤谷地区の大規模崩落箇所で行った。

 電波を用いたデータ通信ができない被災地を想定した訓練方式で、最初は崩落現場から離れた対岸道路にドローン離発着場所を確保。カメラを搭載したドローンは、航空法で定めた高さ規定などの範囲内で尾根沿いルートを飛行し、崩落地を捉えた。

 離発着場所横に停車した近畿地方整備局の衛星通信車両(Car―SAT)が中継して、ドローン映像をリアルタイムでウェブ会議システムにつなぎ、現場と離れた災害対策本部や手元のスマホなどでもリアルタイム映像が共有できることを確認した。カメラを下向きに取り付けたドローンは河川を映し、土砂の流出状況も確認した。

 さらに現場近くに安全を確保できたと想定した飛行訓練では、解像度4500万画素の高性能カメラを搭載した産業ドローンからリアルタイム画像伝送を行った。

 ドローンはあらかじめプログラミングしたルートを自律飛行しながら1秒ごとに写真を撮影。距離1万6700メートルを飛行し、崩落地0.76平方キロメートルで画像計2458枚を取得した。ドローンが持ち帰った詳細データを解析すると3次元点群データが得られ、災害前後を比較すると崩落土砂量などが算出できるという。

 紀伊山系砂防事務所の小原雅彦副所長(59)は「ドローンはヘリコプターよりも天候の影響を受けない。被害情報をより早く、より正確に把握できれば的確な避難の判断等につながる」とリアルタイム情報共有の有用性を強調した。実証実験は災害時協定を結んでいる県測量設計業協会の会員らも見学した。

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