『ブギウギ』太陽のように明るい柳葉敏郎が再登場! スズ子を励ます父の姿に引き込まれる

『ブギウギ』(NHK総合)第89話では、スズ子(趣里)と愛子に会うために、梅吉(柳葉敏郎)が香川からやって来た。ずんずんと歩みを進め、大きくせきばらいした梅吉は、「御免被る! 新聞の集金、半年分です~!」と満面の笑みで冗談を飛ばす。スズ子からは会って早々、「相変わらず間ぁ悪いし、しょうもない冗談言うなあ」と呆れられるが、梅吉を演じている柳葉の太陽のように明るい佇まいに心がグッと引き込まれた。

梅吉は相変わらずマイペースな人物で、スズ子が困ろうと愛子が泣こうとおかまいなし。愛子を抱き上げると「愛子ちゃんの面倒はお父ちゃんに任せてお前はゆっくりしとけ」と得意げだが、喋り倒すわ、「オシメどこや! オシメ!」と騒がしいわで、かえってスズ子は休めない。“お父ちゃんの恩着せ”に「ホンマ疲れるわ」とスズ子はため息をついた。

梅吉の言葉は、確かにスズ子をカリカリさせるものばかりだ。「子育ていうんはな、もっと優雅にのんびりせないかんのや」「ははっ! 嫌やなあ。お母ちゃん、カリカリしてなあ」と口にする梅吉のおおらかな口調に、スズ子をより苛立たせるのではとハラハラしてしまうが、2人のやりとりはスズ子と梅吉の変わらぬ関係を表すものでもある。お風呂から上がったスズ子と梅吉の「なっ、ゆっくりでけたやろ? お父ちゃん来てよかったやろ」「はあ~、せやからそれが疲れんねん」というテンポの良いやりとりはどこか微笑ましく思えた。

「ホンマに、スズ子によう似とるのう」と梅吉は愛子を見つめて、幸せそうに笑っていた。スズ子と梅吉が縁側で過ごす場面で、梅吉はスズ子に同じような笑顔を見せながら声をかける。

「孫より我が子の方がどんだけかわいいか。親いうんはそういうもんやけ」
「大丈夫なんか?」
「つらかったやろ」

冗談でも“恩着せ”でもなく、大切な娘の悲しみに寄り添おうとする声色だった。愛助(水上恒司)に先立たれたスズ子を心配する梅吉も、愛する妻・ツヤ(水川あさみ)に先立たれた身だ。最後には「かわいそうやな、ワシ」と冗談めいて話を締め括った梅吉だが、「ワシもな、ごっついつらかったわあ。もう、何年も、ツヤちゃん死んで」「今でも、たまにな、あっ、ツヤちゃんおらんのか思う時があんねん」と語る梅吉はいつになく真面目な顔をしていた。梅吉は、愛する者を失った悲しみを乗り越えたり、忘れようとしたりしなくていいと伝えたかったのかもしれない。その父の姿は決して恩着せがましいものではなかった。

スズ子と愛子、そして愛助の姿を写真に収めようとする梅吉は、スズ子に向かって「歌、歌う時みたいな笑顔せんかい」と言った。さりげない言葉だが、スズ子が歌を愛していることをよく知る梅吉らしい声かけだ。梅吉は花吹雪を散らしながら帰って行った。娘を一心に思う父の姿に、スズ子は励まされたのではないだろうか。

物語の終わり、羽鳥(草彅剛)からスズ子へ新曲が届けられた。福来スズ子の復興ソングであると同時に、日本の復興ソングでもあると羽鳥は言う。ブギの女王誕生の瞬間が間近に迫っている。

(文=片山香帆)

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