サイモン・フレイザー(ロンドン)、サヘル・バローチ(イスラマバード)
パキスタン南西部バルチスタン州で7日、2件の爆発があり、少なくとも28人が死亡し、多数が負傷した。当局が発表した。同国は8日に総選挙を控えている。
最初の爆発があったのは、バルチスタン州ケッタ市の北部ピシン地区で、16人が殺された。
続いてキラ・サイフラー地区でも爆発があり、12人が死亡した。
いずれも、武装組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を出した。どちらの爆発でも、オートバイに爆発物を仕掛けたと主張している。
パキスタンでは総選挙に関連し、暴力事件や不正の報告が相次いでいる。
また、この選挙ではイムラン・カーン元首相は立候補を禁じられた。カーン氏は現在、汚職の罪などで服役しているが、自身に対する訴追はすべて政治的動機に基づくものだとしている。
パキスタン最大のバロチスタン州は資源が豊富な一方、同国で最も貧しいとされる。暴力事件が絶えず、数十年にわたってさまざまな組織が自治権拡大を求めて闘争を続けている。中には武装したグループもある。アフガニスタンとの国境では、「パキスタンのタリバン運動」(TTP)を含むイスラム主義の武装組織が活動している。
ピシン地区は、アフガニスタン国境から南東に約100キロの地点にある。最初の爆発は、無所属の立候補者の選挙事務所前で起こった。バルチスタン州当局によると、この爆発で死者に加え、負傷者も25人出た。
ソーシャルメディアに投稿された画像には、爆発の影響で車やバイクが破壊されている様子が写っている。当局者はBBCに対し、この立候補者は投票担当者と会議中だったと話した。
二つ目の爆発は政党「イスラム聖職者協会(JUI-F)」の選挙事務所を標的にしたとみられる。AFP通信は警察関係者の話として、爆発はケッタから東に190キロほどのキラ・サイフラー地区の主要市場で起きたと伝えた。
この爆発の負傷者は20人に上った。犠牲者の数はさらに増えるとみられている。
バルチスタン州にたまる不満
8日の総選挙を前に、バルチスタン州とカイバル・パクトゥンクワ州では暴力事件が相次いでおり、今回の事件も予想外の出来事ではなかった。
バルチスタン州で活動する武装組織「バルチスタン解放軍」(BLA)は1月中頃、選挙訓練事務所の爆発事件について犯行声明を発表。人々に選挙をボイコットするよう呼びかけていた。その直後、政党事務所への手りゅう弾攻撃が、州内の各都市で報告された。
バルチスタン州の有権者の多くは、同州の議席数の少なさから、国内の政党から見放されていると感じている。バルチスタンとのつながりがほとんどない候補者を押し付けられていると感じることも多いという。
また、投票が不公平という指摘もある。BBCウルドゥ語は先月、ターバトの街で多くの人から、「これは選別だ」という声を聞いた。
バルチスタン州政府は、8日の投票は予定通り行うと発表している。
総選挙はどうなる
8日の選挙では、1億2800万人以上が投票権を持つ。今回は、議会の336議席中266議席が改選される。
しかし多くの人は、カーン元首相と同氏が率いる「パキスタン正義運動(PTI)」が除外されていることから、選挙の信頼性に疑問を持っている。
PTIは前回総選挙で第1党となったが、カーン氏は昨年に汚職の罪で有罪となり、立候補を禁じられた。今年1月末にはさらに3件の罪状で有罪判決を受け、服役している。カーン氏は、自身に対する訴追はすべて政治的動機に基づくものだとしている。
当局はPTIを弾圧してはいないとしているが、同党の指導者の多くは収監されているか亡命している。昨年カーン氏が拘束された際には、党の支持者数千人が抗議デモを行ない、検挙された。デモは時に暴力的になった。
PTIの候補者は今回、無所属で立候補しなければならない。また、クリケットのバットのシンボルマークも剥奪された。パキスタンは識字率が低く、有権者が投票先を選ぶうえで、このマークは欠かせないものだった。
現在、勝利が見込まれているのは、3回にわたって首相を務めてきたナワズ・シャリフ氏だ。シャリフ氏も、前回の総選挙時には服役中だった。アナリストらは、同氏が政界復帰を容易にするために軍部と取引したとみている。
投票率が高ければPTIの有利に働くと多くのアナリストは言う。国の経済危機について、どう取り組むか、誰のせいにするかは、有権者の関心の高いところだろう。選挙結果は選挙後14日以内に発表されることになっている。
(英語記事 Pakistan election: Two blasts kill 28 in Balochistan day before vote)