【映画「ゴールデンカムイ」SPインタビュー】二階堂兄弟を演じる栁俊太郎、命懸けの撮影を経て感じた“続編への期待”を明かす

全国大ヒット公開中の映画「ゴールデンカムイ」。2014〜22年まで「週刊ヤングジャンプ」(集英社)にて連載された野田サトル氏による同名漫画を映像化した本作では、厳しい北海道の大自然の中で、一癖も二癖もある魅力的なキャラクターたちが、埋蔵金争奪の冒険サバイバル・バトルアクションを繰り広げている。

公開12日で興行収入12.7億円を突破し、高い観客満足度を得る本作。中でも、栁俊太郎さんが1人2役で演じている双子の軍人・二階堂浩平・洋平兄弟の再現度には「二階堂兄弟、実現していた」「イかれ具合が好き」と絶賛の声が続々と上がっている。そんな二階堂には演じる栁さん自身も「大好きだった」と愛着があるよう。今回、作品の魅力をはじめ、過酷な撮影の裏側に迫った。

1人2役だから感じた、他のキャラクターにはない唯一無二の魅力

――本作の出演が決まった時の心境をあらためて教えてください。

「原作も読んでいて、すごく好きな作品だったのでうれしかったです。二階堂というインパクトのあるキャラクターを自分でどこまで面白く持っていけるのか、そこの葛藤みたいなものを感じたのは覚えています。不安も多少はありましたが、モチベーションの方が大きかったと思います」

――原作の魅力についてはどう感じていますか?

「あの壮大なスケールに加えて、シリアスな部分とコメディーな部分、そこのギャップがすごくいいなと思っていて。結構いろいろな映画のパロディーみたいなところも散りばめられているので、非常にエンターテインメント性に富んだ原作だと感じています」

――壮大なスケールの中で、コメディー部分もありつつ、アイヌ文化なども深いところまで描かれているのが印象的です。

「そうですね。やっぱり、野田先生ってアイヌに関して相当勉強したんだろうなって思いますよ。めちゃくちゃ詳しいじゃないですか。どれだけ取材したんだろうと思いますし、想像すると『先生、半端ねえな!』とも思いますよ」

――原作の野田先生も実写映画化にあたり、「内心ものすごく心配していました」とコメントされていましたが、そういった部分ではプレッシャーのようなものもあったのではないでしょうか?

「二階堂という役をやるにあたって、もちろん僕もですが、原作ファンが求めているものってあると思うんです。その準備が整った状態で野田先生がGOしてくれた時点で『あとはもうやるしかない』という気持ちの方が大きかったです。もちろんプレッシャーはありましたが、そのプレッシャーも原作が好きだからこそ楽しめたと思います。本当に二階堂が好きだったので、好きな人のことを考えながら演じるというのはすごく楽しい作業だなと、今回あらためて思いましたね(笑)」

――今回演じられた二階堂兄弟について、その魅力をあらためて教えてください。

「二階堂の魅力はたくさんあるのですが、狂気的な部分と、どこかかわいげのあるちょっとした子どもっぽさはキャラクター的にすごく面白いなと思います。登場するキャラクターにはそれぞれいろいろな事情があって、みんなが金塊に向かって旅していく中で、二階堂だけは“杉元を殺すこと”が目的で、金目当てではないんですね。浩平は洋平のために、仇を討つことに執着して生きている人間なので、体がけがだらけになっても殺しに行く。その“洋平への愛”は、僕は愛せる部分なのかなと思いますね」

――原作、アニメ、そして今回の映画を通しても、二階堂兄弟には“兄弟愛”が欠かせないのかなとも感じます。

「そうですね。もう兄弟愛でしか生きていない人間だと思いますよ。原作だと体中けがしてて、頭もモルヒネ中毒になったりしても、洋平への愛だけは忘れずに生きている。兄弟愛しかないと感じます」

――1人2役ということで、演じる中で大変なこともあったのではないでしょうか?

「単純に同じ撮影を2回やるんですよ(笑)。1人だったら1回でいいところを2回、しかも違う動きで撮影するというのは、なかなか考えることが多かったと思います。撮影していても『今、洋平だっけ? 今は浩平?』みたいなことにもなりましたね」

――二階堂が持つ狂気じみた雰囲気や言動、行動を出すために意識されたことはありましたか?

「キャラクター性というのは原作で強く描かれているなと思ったのですが、今回映画で最後のアクションシーンは原作を膨らませたオリジナルだったので、自分でどうしていこうかと、アクション部さんといろいろ話し合っていました。『二階堂だったらこうアクションするな』『こういう動きの方が、二階堂の人間性を壊さずに見ている人にも楽しんでもらえるだろうな』と試行錯誤しながら動きは作っていきましたね」

――アクション部の監督とも「こうした方がいいんじゃないか?」と自分から提案することも多かったですか?

「そうですね。そこは話し合いながら、アクション部さんの意見も聞きながら、自分の意見も出しながら、長いこと準備していただいたので、結構細かいところまで話し合いながら進めることができたと思います」

――アクションシーンについては納得のいくものができたという満足感も?

「めちゃくちゃ格好よく作っていただいたなと思います。あそこのアクションシーンって、終盤戦じゃないですか。クライマックス感もすごくあって、もちろん(山﨑)賢人とのアクションは間違いなく映画の見どころではあるので達成感もありましたし、ぜひ見ていただきたいなという気持ちもすごい強くなりました」

過酷な撮影を乗り越えて芽生えた“続編”への期待――「これで二階堂を終わらせるわけにはいかない」

――先ほど山﨑さんのお話がありましたが、本作での山﨑さんとの共演にはどんなことを感じましたか?

「すごくフランクで楽しいことが好きな方なので、苦労している部分や努力している部分もあったと思うのですが、あまりそれを人に見せずに現場を楽しくしてくれて、本当に和気あいあいとした空気を作ってくれたのは彼の人間性だと思います。その器のデカさには本当に助けられました。アクションの部分に関しても、プライベートで会うぐらい仲がいいからこそ、遠慮なくお互いに話し合って、攻めるところは攻められたと思いますし、本当に自由に動かせてもらったので、感謝しています」

――信頼があってこそ、納得のいくものができた?

「僕が勝手に甘えちゃったなという気もするんですけどね(笑)。僕は信頼していますし、もちろん賢人もいろいろな作品でアクションをバリバリやっているので、そういう意味ではとても頼もしかったですね」

――山﨑さんが演じる主人公・杉元佐一にはどんなことを感じましたか?

「やっぱり、たくましさもありながら、こういうでかい作品で頑張るそのプレッシャーももちろんあったと思うんです。その中での『俺は不死身の杉元だ!』というセリフは、そういう苦労を知っていると、よりその一言で泣けてくるなと個人的には感じますね」

――「俺は不死身の杉元だ!」というセリフは「ゴールデンカムイ」には欠かせないものになっていますが、山﨑さんと対峙(たいじ)してそのセリフからは迫力のようなものも感じたのでしょうか?

「いやぁ、すごかったです。迫力もだし、その時の緊張感もすごくて。生きるか死ぬかの世界を描いている作品なので、杉元も二階堂もみんな毎回本当に命懸けのシーンなんですよね。そういうシーンが多いので、その緊張感はある意味、楽しかったところもありましたね」

――命が懸かっているからこそ、ある意味、相乗効果のようなものもありそうですね。

「ありましたね。そこを失って演じていると、芝居のスケールもどこか小さくなってしまうと思うので。そこはみんな気合を入れてやっていたと思います」

――撮影は北海道、山形、長野、新潟の大自然の中で行われたそうですが、撮影での思い出やエピソードを教えてください。

「(思い出しながら)たくさんありますよ。舞台あいさつでも言ったのですが、(撮影中に)耳につららができて。そういう経験ってなかなかないじゃないですか。吹雪で寒すぎるけど、玉木宏さんをはじめ先輩方がいらっしゃるので、誰にも言えない。『左耳やばい…』と思いながらも何も言えない状況だったので、本当にギリギリだったんです。工藤阿須加くんとも話しましたが、その時は本当に耳が壊死するんじゃないか…という恐怖がありましたね。でも撮影が終わって、その後テントに戻って耳を温めた時の溶けていく感じはすごく感動しました。『人って、こんな窮地に追い込まれた後にストーブに当たると、こんなにも幸せなのか』と。あれはすごい感動でした」

――ストーブや暖炉に普段当たり前に触れられるからこそ、そのありがたみのようなものもいつも以上に感じたのではないでしょうか?

「本当にその通りです。太陽に当たるだけですごく暖かいんですよ。撮影したシーンが夜で、吹雪がすごくて、本当に極寒で。寒いところでタオルを回すとカチカチになるっていう話があるじゃないですか。まさに耳があの状態なんです。だから、顔の左半分が大変で…」

――人体でそれが起こると…まさに命懸けですね。

「とにかく怖かったです。だから、その恐怖を感じた後にストーブとかで温度を感じると、言葉にできない感動がありましたし、東京に帰った時の『太陽がありがたいな』という感じはすごく覚えています」

――現場での玉木さんの様子はいかがでしたか?

「玉木さんも(耳が)凍ってましたよ(笑)。『耳やばいな!』みたいなことは言っていて、玉木さんも人間なので、僕らと同じように感じていたとは思うのですが、めちゃくちゃプロフェッショナルな方なんです。文句なんて一言も言わないし、演じる鶴見篤四郎中尉ってすごく威厳のあるキャラクターなので、常にその迫力を持ちながら現場にもいられたので、僕もその存在の大きさに圧倒されっぱなしでした」

――玉木さんをはじめ、現場では第七師団のメンバーと共に過ごすことが多かったと思いますが、その分チームワークも強いのではないでしょうか?

「そうですね。第七師団って軍隊なので、スポーツチームの『行こうぜ!』みたいな熱いチームワークとはまた違うので、それがまた面白いんですよね。でも、単純に過酷な撮影をみんなで頑張ったことで生まれた、そのチーム感はもちろんあります。過酷な撮影でも楽しい思い出が強いので、またみんなで集まれたらうれしいです」

――お話を聞いていると、撮影チーム全体でも団結力は強そうですね。

「そう感じますよ。本当にみんな仲がいいし、やっぱりみんな原作が好きなんですね。原作が大好きな人が集まっているから『生半可に演じられない』という気持ちがみんなあったと思うし、それは出来上がった作品を見ていても思いました。みんなの本気度のようなものがちゃんと映像に出ていると感じています。撮影が終わった後もみんなでご飯を食べに行ったりして、すごく楽しかったですね」

――映画は少し気になる終わり方となっていますが、続編があればまた同じチームでやりたいという気持ちも強いですか?

「もちろんです。それはもう『ぜひあってくれ!』と思いますよ。すごく楽しかったし、これだけすてきな作品ができたという実感もあるので、見てくださる方にも『こんな面白い作品の続きが見たい!』と言わせる自信がみんなあると思うので。僕も続編は本当に願っていますし、二階堂をまた演じたいです。これで二階堂を終わらせるわけにはいかないと思っていますし、もし(続編が)決まったら、めちゃくちゃ気合が入ります」

「絶対に楽しませられる自信がある」――撮影期間を通して栁が感じた作品の魅力

――過酷な撮影期間を経て、「ゴールデンカムイ」という作品にはどんなことを感じますか?

「この壮大なスケールと、あとは個性的なキャラクターたち、とにかく熱いキャラクターがたくさん出ているし、面白いキャラクターが多いし、その中で繰り広げられてくシリアスな問題もコメディー要素を含めた展開だったりっていうのが、本当に今まで見たことないような作品だと思うんで、それは原作にしろ映画にしろあると思うんで、そこが間違いなく『ゴールデンカムイ』の魅力だと思います」

――では、実写版「ゴールデンカムイ」が持つ魅力についても教えてください。

「うーん…原作をすごくリスペクトした上で、生身の人間が演じているというところですね。本当に原作を愛しているからこそ、最後のアクション部分にオリジナル要素が加わっても、映画にしかない部分として見られると思いますし、原作のキャラクターがそのまま人間として映っているという自信があります。違う魅力というよりも、“原作から生まれた新しい『ゴールデンカムイ』”が見られることは魅力なのかなと思います」

――作品に触れてこなかった人も、映画をきっかけに好きになったり気になったりする人も増えるのではないかと思います。

「原作を読んでいない人でも間違いなく楽しめる作品だと思います。実際に僕の家族も『見た』という連絡が来たのですが、『めちゃくちゃ面白かった』と言ってくれて。いろいろな声があると思うのですが、絶対に楽しませられる自信があるし、絶対に楽しい作品だと思います。原作を知らずに映画を見た人はたぶん続きがすごく気になるだろうなと思うので、原作もぜひ読んでいただきたいです」

――最後に、これから作品をご覧になる方、ファンの方にメッセージをお願いします。

「『ゴールデンカムイ』が好きで集まったメンバーが、熱い思いを込めてスタッフさんと一緒に作り上げたものなので、原作を読んでいる方も読んでいない方も本当に楽しめる作品だと思います。期待してくださっている方には、その期待に応えられるようなスケール感の大きさになっていますので、ぜひ劇場で見ていただきたいです。本当に皆さんの力で盛り上げていただいて、広めていっていただけたらうれしいです」

〜インタビューでは、作品にかけたこんな質問も〜

――本作は“埋蔵金争奪サバイバル・バトル”ということで、杉元が北海道の金塊の話を聞いたところから物語が始まりますが、栁さんが「この話を聞くとついソワソワしてしまう」「これには目がない」というものを教えてください。

「なんだろうな…身近なもので言うと『あそこうまいんだよね』というご飯屋さんには行きたいなと思うことがありますね。結構口コミを信じるタイプで、映画とかドラマでも『面白いよ』という口コミは重要ですね(笑)」

――ちなみに、最近口コミきっかけに食べたものは何かありますか?

「ローマピザがおいしかったですね。現場が一緒だった役者の先輩に『どこ住んでるの?』と聞かれて、『あそこに住んでます』『あ、じゃあその近くにあるローマピザの店が超うまいんだよ』と言われて。いざ行ってみたら、めちゃくちゃうまかったですね。見たことはあったけど、お店の中には入ったことがなかったんですよ。『ローマピザってうまいんだ』と気付かされました」

【プロフィール】

栁俊太郎(やなぎ しゅんたろう)
1991年5月16日生まれ。宮城県出身。近年の主な出演作に、ドラマ「新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~」(日本テレビ系)、「アトムの童」(TBS系)、「けむたい姉とずるい妹」(テレビ東京系)、NHK大河ドラマ「どうする家康」、「ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜」(Netflix)など。ドラマ「夫を社会的に抹殺する5つの方法 Season2」(テレビ東京ほか)が現在放送中、5月には映画「バジーノイズ」が公開予定。

【作品情報】

映画「ゴールデンカムイ」
全国にて大ヒット公開中

取材・文/平川秋胡

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