[社説]渇水とPFAS対策 遅れのしわ寄せ県民に

 発がん性が指摘される有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)の影響で停止していた中部河川からの取水が11日にも再開される。雨が少なくダム貯水率が低下しているためで、県企業局が沖縄渇水対策連絡協議会で説明した。

 2016年、北谷浄水場の重要な水源である比謝川などから高濃度のPFASが検出され、企業局は段階的に取水を停止していた。

 県によると、河川からの取水再開後に希釈されたPFAS値は、国の暫定目標値である1リットル当たり50ナノグラムより低く、PFASを吸着する活性炭を通過した後はさらに下がるとみられている。

 北谷浄水場を利用する市町村は那覇、浦添、宜野湾、中城、北中城、沖縄、北谷の7自治体。そこに暮らす住民が口にする水の安全性について、県は丁寧に説明する必要がある。

 PFASは自然界で分解されず、体内に長く蓄積される。米国では、飲み水における厳しい基準値案が示された有害物質だ。

 県の23年度調査によれば、普天間飛行場周辺でPFASの一つPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)の合計が、国暫定目標値の44倍となる2200ナノグラム、嘉手納基地周辺でも1900ナノグラムと高い値を示した。

 飲食や炊事に風呂と、生活のさまざまな場で水は生活に不可欠なもの。いくら安全だと言われても「汚染されていたら」の不安がつきまとう。

 PFAS問題は基地が関係する環境問題の一つであり、対策の遅れによるしわ寄せを県民が受けている。 

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 そもそもPFASは米軍基地に近い河川で多く検出され、汚染源は基地である可能性が高いと指摘されている。だが日米政府は因果関係を認めようとせず、米軍は立ち入り調査を許可していない。早急に調査して汚染原因を突き止め、対策を取るべきだ。

 PFASを巡る課題は、健康問題に限らない。

 24年からの市町村水道料金の段階的な引き上げについて、最終的に増額する1立方メートル当たり33.46円のうち、約11%がPFAS汚染対策にかかる費用だった。料金改定によって賄う対策費は年間で約5億円にも上る。

 なぜ基地由来とみられる水質汚染の対策費を県民が支払うのか。北谷浄水場の活性炭取り替えでは、年間約3億6千万円が必要だという。国の補助があるとはいえ県の負担は大きく、今後も膨らむ可能性がある。本来、PFAS対策費は国が負うべきものだ。

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 日本のPFASに対する取り組みは遅れている。

 PFOSとPFOAについて、米国の飲料水の基準値案はそれぞれ1リットル当たり4ナノグラムと日本より厳しい。生命に欠かせない水の安全性について感度を高め、不安の払拭に力を注ぐべきだ。

 特に島しょ県である沖縄で水は貴重だ。断水に苦しむことも多かったが、ダムが整備され水を巡る環境は格段に向上した。しかし今年は過去10年間で最も早く渇水が進んでいる。県民一人一人が節水への意識を高めたい。

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