米上院、ウクライナとイスラエル支援の新たな予算案を審議へ 原案は共和党の反対で否決

米議会上院は8日、ウクライナとイスラエルへの軍事支援を含む950億ドル(約14兆円)規模の包括支援案を審議すると決めた。上院は前日には、不法移民対策を絡めた超党派の予算案を採決したものの、野党・共和党が反対したため、通過しなかった。与党・民主党議員らは、ウクライナやイスラエルへの対外支援を、どうにかして実現しようとしている。

当初の予算案は1180億ドル(約17.6兆円)規模で、アメリカとメキシコの国境規制と、ウクライナおよびイスラエルへの支援をセットにした内容だった。4カ月にわたる調整を経て7日の採決にこぎ着けたが、成立を阻止するようドナルド・トランプ前大統領が野党・共和党に呼びかけたため、否決された。

この当初案について、共和党は移民対策が不十分だと主張していた。一方、与党・民主党からは逆に、移民対策が過剰だとの批判が一部議員から出ていた。

この結果を受け、民主党の上院幹部らは別バージョンの予算案を急ぎ作成。同党幹部のチャック・シューマー上院院内総務は、対外支援はそのままに、移民対策を削除した代替案を提出した。

全体で950億ドル規模で、ウクライナへの支援600億ドル、イスラエルへの安全保障支援141億ドル、イスラエルとウクライナの状況を受けた人道支援91.5億ドルが含まれている。

また、アメリカの紅海での活動支援に24.4億ドル、インド太平洋地域の同盟国支援と「中国政府による侵略の抑止」のために48.3億ドルも計上されている。

上院は8日、この新たな予算案を審議するかについて採決。賛成67票、反対32票で審議を決めた。

シューマー氏は採決について、「よい最初の一歩だ」とし、「仕事をやり遂げるまでこの案に取り組み続ける」と述べた。

トランプ氏の影響力

7日に否決された370ページに及ぶ緊急予算案は、移民の入国をめぐって、一定の基準人数に達した時点で国境を完全に閉鎖する権限を新たに連邦政府にもたせるとしていた。

これにより現実には、閉鎖後に不法入国した移民は亡命申請ができず、すぐに強制送還されるとされていた。

しかし共和党は、国境対策の改革が不十分だとし、予算案が公表される前から反対していた。

移民問題は、11月の大統領選でジョー・バイデン大統領の民主党政権の打倒を目指す共和党にとって、重要課題となっている。同党では、トランプ氏が党候補として指名される可能性が高まっている。

そのトランプ氏は、共和党議員らに今回の予算案に反対するよう要求。最近の選挙集会では、「どうぞ私のせいにして」と発言していた。

7日の採決で賛成した共和党議員は4人だけだった。民主党の6議員が反対票を投じ、そのほとんどは移民対策への反対を理由としていた。

緊急予算案を支持していたバイデン氏は7日夜、ニューヨークでの私的な資金集めの集会で、共和党議員らは「ドナルド・トランプから電話があって脅されたので逃げている」と述べた。

アメリカのウクライナへの軍事支援は、昨年12月から保留となっている。共和党は、国境危機に対処する追加措置が取られる場合のみ、ウクライナ支援を支持すると表明。この経緯から、超党派の予算案がまとめられていた。

アメリカはウクライナにとって最大の支援国となっている。ウクライナは、西側からのさらなる支援がなければ、戦争の取り組みと財政が危機に陥ると訴えている。

米政府のジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、北大西洋条約機構(NATO)トップの会談のために訪れているベルギー・ブリュッセルで、ウクライナ支援に言及。米議会は「何度も行ったり来たり」しているが、アメリカは必要な支援を「(提供)できるし、する」と述べた。

(英語記事 Senate advances aid package for Ukraine and IsraelUS Senate bid to salvage Ukraine and Israel aid as border deal crumbles

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